パルスオキシメーターで定期的に酸素飽和度をチェックしたい(写真:アフロ) 画像を見る

「新型コロナウイルスの感染者の中には、“陽性だったけど、無症状、軽症だから自分は大丈夫”だと、楽観視されている方が多く見受けられます。たしかにデルタ株のときと比べて、オミクロン株では重症化する人は減りました。しかし、たとえ軽症でも、療養中の経過観察はしっかりやるべきです」

 

そう話すのは、日本感染症学会専門医で、東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授だ。

 

厚生労働省の統計では、8月3日時点で全国で約145万人の感染者が自宅で療養している。自宅療養中に容体が急変して亡くなるというケースも報告されており、無症状、軽症だからといってけっして安心などできないのだ。

 

「自宅療養で大事なことは、体に起きた“異変”を見逃さないこと。そのためには、体が発するサインに気付くことがとても重要です」(寺嶋教授・以下同)

 

そこで、自宅療養で心得ておくべき、コロナ急変の危険なサインについて寺嶋教授に解説してもらった。

 

「体の症状でチェックすべきポイントは、大きく分けて『呼吸』『意識』『脱水(水分)』の3つです。まず『呼吸』ですが、新型コロナの感染で肺炎を起こし、酸素飽和度が下がると呼吸がつらくなります。たとえば、トイレに立ったり、2階の部屋へ階段を上がる際に息が上がって、ハァーハァーする場合などは危険な兆候だと判断してください」

 

さらに危険な状態なのが、唇や爪の色が、赤みが減って紫色になった場合。

 

「このような状態は、血液中の酸素が少ない証拠。酸素量がよほど下がらない限り、唇や爪が紫色になることはないので、緊急事態だと判断してください。爪の色は自分でもわかりますが、一人暮らしの場合だと、唇の色はなかなかわかりません。一人暮らしの方は、手元に小さな鏡を置くなどして、ときどきセルフチェックしましょう」

 

自宅に血液中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターがあれば、定期的に数値をチェックしよう。

 

「正常な場合は数値が96以上。94、95がボーダーラインです。93以下は要注意で、90以下だとすぐに救急車を呼ぶべきレベルです」

 

次に『意識』について。“会話の辻褄が合わない”“呼び掛けても反応が鈍い”場合は、急変する一歩手前だと判断すべきだという。

 

「聞かれたことに対して、答える内容がおかしい。たとえば、生年月日や年齢が言えない。また、話しかけてもボーッとしていたり、意識が朦朧としているときは危ない状態です。躊躇することなく救急車を呼びましょう」

 

最後に『脱水(水分)』。感染によって発熱や、呼吸が苦しくなる症状が出ると、食事や水分を受け付けなくなることも……。

 

「食事はある程度受け付けなくなるのはやむを得ないですが、ゼリー状の栄養補助食品、さらには水分そのものすら受け付けなくなると、状態が悪化している兆候です。このような状態が続くと、脱水を引き起こします。脱水症状になると、座っている状態から立ち上がった瞬間に、目の前が暗くなって立ちくらみを起こしてしまい、大変危険です」

 

自宅に血圧計があれば、血圧も小まめにチェックしておきたい。上が90以下になっていたら要注意。同時に脈拍が1分間に125以上ある場合も、症状が悪化していると判断するべきだという。

 

「一人暮らしの人で自宅療養中の場合は、家族や知人などと1日2回ほど、定期的に電話などで連絡を取り合って、自分の状態を相手にチェックしてもらうといいでしょう」

 

まだまだ予断を許さないオミクロンBA.5の猛威。自分や家族が感染し、自宅療養になった場合に備えて、急変する前の危険なサインをきちんと確認しておこう。

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