「この春に(新型コロナを)新型インフルエンザ等感染症から外し、5類感染症とする方向で、専門家に議論していただきたいということを確認した」
「マスク着用の考え方などの感染対策のあり方についても見直していく」
1月20日、関係閣僚と協議し、新型コロナの位置づけを季節性インフルエンザと同じ「5類」に変更するとともに、マスク着用のルールを緩和する方針を示した岸田文雄首相(65)。同日の会見では冒頭のように語った。厚生労働省を担当する大手新聞社記者が語る。
「昨年5月に厚生労働省は、マスク着用について屋外では原則不要、屋内では会話がなく距離を確保できる場合は『不要』と行政指導を改定しました。今回の会議ではマスク着用のルールについて『屋内でも症状がなければ不要』とする案が浮上しています。政府のなかには、マスクをしない外国人観光客の増加にともない、国内でもマスク不要論が加速すれば、表面的にでも『平時の日本』に戻れるとみている人がいるのです」
第8波のピークは越えたとみられているが、1月14日のコロナの死者数は、一日の発表として過去最多となる503人に。12月20日からわずか1カ月間で11146人がコロナで命を落としている。
■医療にアクセスできない患者がさらに増加するリスクも
昭和大学医学部客員教授の二木芳人先生(臨床感染症学)が語る。
「政府は『ある程度の犠牲は仕方がない』というスタンスなのでしょう。しかし、その覚悟ならば、国民に明確に説明をするべきです。たしかにコロナで亡くなっている方には、持病や全身状態が悪化して命を落としている人も少なくありません。しかし、そもそもコロナに感染しなければ、今でも平穏な日々を過ごせた方々。それを見ないふりをしてマスク不要を議論するのは、国民に間違ったメッセージを発することになります」
改めてマスクの効果について二木先生に解説してもらおう。
「感染している人はウイルスをまき散らさないこと、さらにウイルスを含んだ飛沫を受け取らないという意味では、マスクは現段階では基本的に有効な防御手段です。米ボストンでマスク着用の解除指示が行われた学校で“マスクを外した地区”と、“マスクを外さなかった地区”とを比較した調査では、マスクを外した地区の感染者割合が2倍も多かったという報告もあります」
岸田政権が進めるマスク不要論はなにをもたらすのだろうか?
「感染者の全数把握をやめたことで、陽性者だけど知らない顔をしている人などの“隠れ感染者”が急増。また水際対策が緩和され、米国などで拡大しているオミクロン株のひとつで感染力が強い『XBB.1.5』が日本で流行する可能性も高い。政府からマスク不要のメッセージを発することで、高齢者施設でのクラスターだけでなく、救急搬送困難や医療にアクセスできない患者がさらに増加するリスクや後遺症の問題もあります。大切な人だけでなく自分の命を守るため、状況を見ながらメリハリのあるマスク着用が重要です」
経済や“ムード”優先の岸田首相の甘言にだまされてはならない。今後も、感染リスクの高い場所に行くときや、家族に高齢者がいる場合などはマスクを続けよう。