「オミクロン株に置き換わって以降、新型コロナ後遺症による症状の傾向は大きく変化しています」
こう話すのは、岡山大学病院の「コロナ・アフターケア外来」で後遺症患者を診察している、大塚文男副病院長。
岡山大学病院では‘21年2月~‘22年12月までのコロナ後遺症患者526人を対象に、従来株・デルタ株・オミクロン株ごとに症状の違いを調査し、最新結果を発表。
オミクロン株以降の男女比はほぼ同じだが、患者の年代で最も多いのは40代(25%)。
30~50代で全体の61%を占めており、後遺症を発症するのは働き盛りの年代に多いことがわかる。
「従来株、デルタ株の後遺症は、『味覚障害』『嗅覚障害』『脱毛』の症状が目立っていました。しかし、現在のオミクロン株ではそれらの症状を訴える患者さんの割合は減少。反対に、『睡眠障害』を訴える患者さんの割合が、これまでの2倍以上に増加したんです」(大塚副病院長・以下同)
睡眠障害とは、なかなか寝つけない(入眠障害)、夜中に何度も目を覚ます(中途覚醒)など、睡眠に何らかの異常がある状態のこと。
また、睡眠障害と併せて頭の中がモヤモヤし、霧がかかったような状態になる「ブレインフォグ」の症状を訴える患者も増えているのだとか。
「ブレインフォグとは、日常生活において、集中力が続かない、物事が思い出せないなどの状態を指します。睡眠障害はそういったブレインフォグの症状につながりうると考えられます」
岡山大学病院では、コロナ後遺症で治療終了となった患者は、発症してから回復まで平均して182日かかったという。
「現在までで、従来株の後遺症は77%、デルタ株では74%が治癒しています。オミクロン株の後遺症に関しては、まだ治療期間が短いこともあり36%という数値に。全体で見ても、いまだ4~5割の患者さんは半年が経過してもコロナ後遺症が残っている状態です」
つまり、いまコロナにかかるとオミクロン株で急増している「睡眠障害」に半年以上悩まされる危険が大いにあるのだ。
さらに、厚生労働省のデータによると、慢性的な睡眠不足は、糖尿病や高血圧、心筋梗塞などの生活習慣病になるリスクを高めるとされている――。
5月8日から新型コロナの感染症法上の位置付けが「2類相当」から「5類」に引き下げられるが、大塚副病院長は、コロナに対する緊張感の緩みをこう懸念する。
「現状では後遺症に効く特効薬はありません。発症すれば長引くことが多いので、日常生活にも支障をきたします。
後遺症にならないためには何より感染しないこと。『5類』になっても基本的な感染予防対策を継続していくことが大事だと思います」
オミクロン株に感染しても“軽症だから大丈夫”ではなく、睡眠障害をはじめ、さまざまな後遺症のリスクが潜んでいることを再認識しておくべきだろう。