「『家族ゲーム』の撮影に入ったのは、高校1年生の秋。ちょうど思春期から大人になる時期に長渕剛さんと出会い、パート2の撮影も含めて2年近く、ずっとくっついていました」
こう語る松田洋治さん(56)が、同ドラマの出演の経緯を振り返る。
「子どものころ、国際放映というスタジオの近くに住んでいたので、公園で遊んでいると、よくロケ隊がやってくるんです。テレビにすごく興味があったので、『ケンちゃんシリーズ』(TBS系)の宮脇(康之)さんに話しかけると、『出たいなら、児童劇団に入るといいよ』と教えてもらいました。劇団に入ってから、『東芝日曜劇場』(TBS系)にたびたび出演させていただき、ディレクターだった柳井満さんにもかわいがられました。柳井さんはTBSの金曜8時の枠ではプロデューサーを担当しており、『3年B組金八先生』など、教育をテーマにしたドラマを手掛けてこられた方です」
金八先生シリーズがいったんお休みになったとき、同枠で放送されたドラマが、視聴率で苦戦。途中で打ち切りとなり、6話分だけ、新ドラマを作ることになった。
「それが『家族ゲーム』でした。柳井さんは金八先生で武田鉄矢さんを抜てきするなど、シンガーの表現力を引き出す手法を取るので、長渕さんに主役をオファーしたのでしょう」
思い出に残っているのは、第1話の最終シーンだ。
「2人きりで歩くシーンだったのですが、しばらくカメラを回すので、沈黙時間も長かった。それで長渕さんがご自身の曲『俺らの家まで』のサビを歌いだしたので、僕も合わせて歌ったら、すごく喜んでくれたんです」
長渕は「洋治」と松田さんを呼び、自身のコンサートやラジオ番組、自宅に連れていってくれた。
「硬派なイメージが強いですが、僕には明るいお兄ちゃんのような存在です。ラジオには『出ちゃえ、出ちゃえ』っていきなり出演することになったりしました」
ラジオ番組には、秋元康も放送作家として出演していた。
「お2人はすごく仲がよくて、『家族ゲーム』のお母さん役だった白川由美さんの家で集まるときも、秋元さんはいらっしゃっていました。白川さんが『おあいそして』というシングルを1枚だけリリースしたのも、この食事会がきっかけなのだろうと思います」
6週分だけ穴埋め的に作られたドラマだったが、反響が大きく、翌年はパート2も放送された。
「パート2では、長渕さんにプロレス技をかけられるシーンがあったのですが、お互い素人だから、肋骨にヒビが入ってしまったことも(笑)。その後、長渕さんと共演する機会はないのですが、銀座で開催された長渕さんの個展でお会いしたとき『久しぶりだな! 元気にやっているのか』と喜んでくれて。お兄ちゃんとして接してくれたのがうれしかったですね」