「皇后さまの笑顔で緊張が一気にほぐれました」
雅子さまのほほ笑みとおもてなしに感激したのか、ベトナムのタム国家主席夫人はこう語ったという。11月28日、天皇陛下と雅子さまは、公式実務訪問賓客として来日したトゥオン国家主席夫妻を皇居・宮殿に招いて会見され、昼食会を開かれていた。
冬らしい茜色の西日が差し始めた14時過ぎ、お見送りのために両陛下は玄関に向かってトゥオン夫妻と談笑されながら歩かれてきたが、そのまま7分ほど話し込まれたのだ。
「国家主席夫妻が車に乗り込む直前まで、両陛下とのお話が弾んでおりました。いわゆる“立ち話”がこれほど長引くのも非常にめずらしいことです。両陛下による一連のおもてなしに、トゥオン夫妻も感動したのでしょう。
昼食会では、前菜に押しずしなどの和食のほかに、乾杯の飲み物としては初めて、日本酒が供されました。これまで昼食会の乾杯はシャンパンで行われてきましたが、“ぜひ和食を提供しては”と両陛下が発案され、取り入れられることになったのです。
また、日本の伝統工芸品を紹介したいという両陛下のお気持ちから、江戸切子のグラスが乾杯に使われました」(皇室担当記者)
日本を代表して、“和風”のおもてなしで喜んでほしいーー。
こうした陛下と雅子さまのお計らいは、11月17日に開かれたキルギスのジャパロフ大統領夫妻との昼食会でも光っていた。このとき、前菜として手まりずしなどの和食が初めて昼食会で供されたことも注目を集めたが、宮内庁関係者は「小さな工夫に見えますが、大きな改革なのです」と語り、こう続ける。
「1868年に、明治天皇が初めて外国の使節団と引見されて以来続く皇室の国際親善の歴史のなかでも、伝統を破る画期的な出来事といえます。国賓などのVIPをもてなす昼食会や晩餐会では、明治時代から国際的な儀礼や慣例もあり、宮中ではフレンチのコース料理が一貫して供されてきたからです」