ダウン症の俳優として初めて連ドラに出演した吉田葵(撮影:加治屋誠) 画像を見る

俳優のザック・ゴッツァーゲンはアカデミー賞授賞式でプレゼンターを務め、モデルのマデリン・スチュアートはニューヨークのランウェイを闊歩、ジェイミー・ブルーワーは人気ドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー』の常連キャストに……。

 

アメリカではダウン症でありながらさまざまな分野で活躍するセレブは多い。そして日本でも、一人の“ダウン症のあるスター”が生まれようとしている。(全3回、前編)

 

■「障がいのある役は、その当事者が演じる」エンタメ界に変化が

 

「タカシく~ん!」
「お、でらちゃん! 耳タブ、触るか?」

 

巨匠、ヴィム・ヴェンダース監督による現在公開中の映画『PERFECT DAYS』。同作でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した役所広司(68)が演じる平山は、タカシ(柄本時生)の耳タブを触りに来る不思議な少年を穏やかな表情で見つめる。

 

この映画で“ダウン症の少年”を演じているのが吉田葵(17)、本人もダウン症のある少年だ。昨年5~7月に放送された連続ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK BSプレミアム)でもメインキャストに名を連ねていた。

 

「障がいのある役はその当事者が演じる」。エンタテインメントの世界ではそんな変化が起き始めている。とはいえ、日本で実際にダウン症の役を当事者が演じた例は少ない。日本ダウン症協会理事の水戸川真由美さんが語ってくれた。

 

「単発のドラマにダウン症の人が出ることはこれまでもありましたが、連続ドラマは葵君が日本初でしょう。撮影が長期間にわたることに加えて、連続ドラマは第1話と最終話のロケを同じ日にするなど、パートごとに撮影することも。健常者なら理解できますが、ダウン症の人だと混乱したり、理解するのに時間がかかったりすることがあります。また、シーンごとの感情の作り方もとても困難です」

 

ダウン症の俳優・吉田葵は、どのように誕生したのか──。

 

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