モテる男の役が印象的だった宅麻伸 画像を見る

「もう34年も前の作品ですか! 当時は30代半ばで、職場の若い先輩役から課長役が増えていったころですね」

 

こう振り返るのは宅麻伸さん。80~90年代は、とにかく女性にモテる役が多かった印象だ。

 

「でも、20代の若いころは新人刑事役が多かったし、戦争を扱う作品では丸刈りになっていたし、わりと泥くさい感じだったんです。それが『抱きしめたい!』のスペシャル版(1989年、フジテレビ系)で、いきなりタキシード姿でピアノを弾いたりする役に。生まれて初めてモテる役を演じたのはこのときです」

 

こんな経緯が『クリスマス・イヴ』の脚本家、内館牧子さんの目に留まったのだろう。

 

「ボクにとって内館先生の作品は同作が初めてでした。たしかに“モテる上司”としては描かれているのですが、さらに“女たらし”の要素も加わっていました。どうも内館先生のボクに対する印象は、女性にだらしない男性のようです。その後、内館先生の作品に出演したのは『都合のいい女』(1993年)ですから(笑)」

 

『クリスマス・イヴ』では吉田栄作の上司を好演した。

 

「撮影の待ち時間に、栄作君はよく『アメリカで勝負したい』と言っていました。大きな夢を語る好青年という印象で、その後、本当に渡米するのだからすごいなと思いました」

 

銀行員役だったため、現場の吉田はスーツ姿だったが、撮影を終えて現場から帰るときにはTシャツ&ジーパンに。

 

「そう、爽やかで“やっぱり、栄作君はコレだよな”と思っていました。ボクもこんな“爽やか路線”で行きたかったのですが、台本を読むと、どんどん女たらしに拍車がかかるんです」

 

妻(羽田美智子)がいるにもかかわらず、職場では清水美砂演じる愛人と不倫関係。しかも、吉田の恋人役・仙道敦子にも手を出してしまうのだ。

 

「今でも忘れられないのが、ボクの自宅でこの3人が一堂に会するシーン。“どうやって演じるの、これ!”って。プロデューサーや演出家の方々の案だと思うのですが、妻役の羽田君が気まずい雰囲気が流れる室内で、くるみを黙々と割り続けるんです。それがものすごく緊迫感を与えて、役を忘れておびえてしまいました」

 

こうした役どころがハマり、代表作となる『課長島耕作』(1993~1998年、フジテレビ系)でも“モテ男”“課長”ぶりを存分に発揮することになったのだ。

 

『クリスマス・イヴ』(TBS系・90年~)

大手都市銀行の総合職社員・藤井剛(吉田栄作)と一般職の女性(仙道敦子)の行内結婚を巡る恋愛模様を描く。エリートの象徴が都銀の総合職だったり、結婚と仕事の2択に悩んだり、クリスマス・イヴが一大イベントだったり、できる上司がすぐ不倫したりと、バブルみの強い作品。

 

【PROFILE】

たくましん

1956年、岡山県生まれ。1979年、『七人の刑事』の刑事役で本格的に俳優デビュー。『どうする家康』のような渋みのある役から、『勇者ヨシヒコと魔王の城』のユーモラスな役まで幅広く活躍している。

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