「いつか自分の個展を開きたいという思いは、心の内にはありました。でも、描く作品に自信があるわけでもないし、あまりにも未知数で不安も大きい。役者として自分の作品を見るのは慣れましたが、絵はこれが初めて。久しぶりに新しい経験をしているので、緊張でドキドキが止まりません(笑)」
自身初の個展「愛と渇きと。」を開催中の板垣李光人(22)。これまで描いてきたデジタルイラストと、映画『ブルーピリオド』の撮影を機に取り組むようになった油絵を組み合わせて制作された複合的なキャンバスアートを中心に全12点が展示されている。
「デジタルイラストはフラットな状態でキャンバス生地にプリントされ、その上に重ねる油絵の具は独特の立体感と艶がある。無機質なものと生々しい動きのあるものとそれぞれの質感のコントラストが面白いものになったのではないかなあと思います。絵を見る角度によって絵の具の反射も色の見え方も変わりますし、デジタルだけのときよりも作品が多面的になりました」
幼いころから絵を描いてきたが、それまで人から教えてもらうことはまったくしてこなかったという板垣。『ブルーピリオド』で初めて先生の指導を受けて、「芸術とはなんぞや」を学んだ。
「デッサンは特に学びが多くて、見たものをそのまま描くのがいちばん難しかったです。ものを見るとき、どうしても先入観が邪魔するので、自分の持っているものを一度すべて破壊しなければならない。それは、役者の仕事にも通じることだと思いました」
アートはあくまで趣味で、仕事に影響があるかは別だと話していたが、すでに趣味を超えている?
「一生、趣味のつもりだったんですよ。でも、一回個展をやってしまうと、次はもうちょっとこうしたいとか思うでしょうね(笑)」
10月公開の映画『八犬伝』など話題作への出演が続く板垣。自身の活躍についてはどう思っているのだろうか。
「個展のタイトルではないですが、“渇く”暇なくいろいろなお仕事をさせていただいていますね(笑)。ただ、いくつもの作品を同時に進めるのはあまり得意ではなくて、一つの作品が終わったら一度ちゃんと深呼吸をして、それから走りだすのが自分には合っているし、120%の力を出していくために必要なんだろうなあと思っています」
【INFORMATION】
板垣李光人個展「愛と渇きと。」
10月12日から20日まで名古屋PARCO西館6F・PARCO GALLERYにて、10月25日から11月10日まで大阪の心斎橋PARCO9F・EVENT SPACEにて開催。入場料/700円。前売券販売中