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“天然歯に近い見た目と、かみ心地”から第二の永久歯と呼ばれる「インプラント」。ほかの歯に負担をかけないので、歯の寿命を延ばすと期待されるが、治療や費用をめぐるトラブルが相次いでいる。

 

■記憶に新しいインプラント詐欺事件

 

今年6月中旬、千葉では前代未聞の詐欺事件が世間を騒がせた。

 

逮捕された歯科医院の元院長(58)は、インプラント治療を申し込んだ女性患者(50代)に対して、「(女性の)症例を講演会の資料として、インプラントメーカーに提供すれば、後日400万円返金される」などと、虚偽の説明をして、現金200万円を支払わせた。

 

ところが、手術が繰り返し延期になったため、女性が返金を求めると、元院長は一向に応じなかったため警察に被害届を提出。

 

元院長に対する相談や被害届はこの女性のほかにも十数人の患者から出ていて、被害総額はなんと1億円以上にもなった。あまりにも悪徳すぎる。

 

「同じ医師として情けない……」

 

そう憤るのは、幸町歯科口腔外科医院の宮本日出院長。「高額な費用を提示する、あるいはろくに説明をしないで手術を勧めるような歯科医には注意が必要です」と警鐘を鳴らす。

 

宮本院長のもとには、ほかの歯科医院からインプラント治療を受けた人が転院してくるケースも少なくないという。

 

「治療のリスクや費用など十分な説明をされないまま、すぐに手術を決めて受けてしまうと、後からトラブルに発展しやすいのです。

 

特にインプラント治療は自由診療のため高額なのと、アゴの骨を削るので、高齢になるほど骨への負担や後遺症などのリスクが伴います」(宮本院長、以下同)

 

インプラント治療とは、アゴの骨にチタン製の人工歯根を埋めて土台を作り、セラミックなどの人工の歯をかぶせる治療法。健康保険の適用外なので、全額自己負担になる。

 

消費者庁と国民生活センターが連携している「事故情報データバンクシステム」には、2009年から命・身体にかかわる消費上の事故が集約されている。「インプラント」によるトラブルは7月9日時点で、1千159件も寄せられている。

 

■インプラント治療を普通にやったら儲からない

 

目立つトラブルは、費用面と手術後の不具合に関するものだ。

 

「インプラント治療は、クリニックによって金額にばらつきがありますが、手術代込みで1本40万~50万円が相場。私のクリニックでは、ドイツ製のインプラントを使っているので30%が材料費、手術後に十分なメンテナンスを行うので60%が人件費等で、利益は10%ぐらいしか出ないのが現状です。

 

摘発されたクリニックのように高額な費用を提示するのも要注意ですが、反対に安さを売りにしている医院は材料費や人件費をカットしている可能性が考えられます。最も大切なのはメンテナンスで、手術後、定期的に通い、かみ合わせなどをチェックして調整するので、アフターケアがしっかり行われているのか確認しましょう」

 

広告などで、たくさんの手術実績をうたっている場合があるが、メンテナンスもしっかり行われているかどうかは診療台の数が一つの目安になる。

 

「メンテナンスを担当するのは主に歯科衛生士で、一般的に1台の診察台につき1人の配置が基本です。数多くの実績をうたいインプラント治療を積極的に行っているのであれば、メンテナンスのために7台ぐらいは診察台が設置されているはずです」

 

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