24年7月、埼玉県川口市の歩道に落下した店舗の看板。突風の影響とみられる。看板の下にいた60代男性が頭に重傷を負った(写真:共同通信) 画像を見る

「10年前の台風の夜。都内から神奈川県の自宅に帰ると、住宅街一帯は停電で真っ暗。さらに5軒隣には人だかりができていて、何だろうと思ったら、古い電柱が折れて倒れていたんです。電柱が突っ込んだ屋根は重さ数百キロの変圧器でつぶれ、穴が開いていました。幸い住民の方は無事でしたが、自分の家に倒れてきて、2階部分にいたらと思うと恐ろしいです……」

 

読者の30代女性は、2015年の台風18号の経験をこう語る。

 

9月に入り、本格的に台風シーズンを迎えた日本列島。先日の台風15号も、西日本を中心に甚大な被害をもたらした。今後も台風の発生頻度は平年並みかそれ以上との予想もあり、暴風雨で電柱や街路樹などが倒れる被害も懸念される――。

 

山梨大学地域防災・マネジメント研究センターの武藤慎一さんは、次のように話す。

 

「国や行政は、点検や規制強化などそのつど、対策を立てて取り組んできてはいます。しかしその対策は、やはり事故が起きてから、後手の対応に回っている印象があります。私たち市民は、災害の有無にかかわらず、建造物やインフラ設備の倒壊などの事故ゼロを目指し、リスクを把握して注意を怠らないことが重要です」(武藤さん、以下同)

 

地域防災のスペシャリストである武藤さんに、私たちが出くわす恐れがある「街に潜む危険サイン」について解説をお願いした。

 

「まず、老朽化した看板などの落下事故が挙げられます。建物などの所有者が設置の届け出を許可される際、看板の安全性もチェックされているはずなのですが……。古くなると、どこまで守られているかは、不明な部分があります」

 

特に空き店舗などの場合、長く放置され、管理点検が不十分になっている可能性がある。

 

「看板の接続部などにサビがあったり、腐食していると落下の恐れがあります。また、経年劣化で金具が緩んでいる場合も、落下する恐れがあります」

 

危険な状態の看板は、強風がトリガーとなり落下する可能性が高いという。2024年7月には、竜巻注意情報が出ていた埼玉県で、JR川口駅付近のビルの看板が歩道に落下。この事故で、60代男性が頭に重傷を負っている。“看板なんてめったに落ちてこないだろう”と油断は禁物だ。

 

「異変のある看板を発見したら、まずはお店の方に伝えてみるといいと思います。それでも改善が見られなければ、市区町村の役所(都市計画課など)に相談すべきです」

 

次に、電柱の倒壊だ。2019年9月の令和元年房総半島台風(台風15号)では千葉県を中心に甚大な被害が発生。経済産業省の調査によれば、倒壊・損傷した電柱はおよそ2千本と推計されている。日本中には通信と電力を合わせて約3千600万本もの電柱があるが、台風の際に折れてしまうような、危険な電柱の見定め方はあるのだろうか?

 

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