「今日も舞台の本番前に、春風亭小朝さんから舞台用のギターをいただいて。その前も沖縄の知らない人から荷物が届いたので開けてみたらピンクの衣装が入ってた。衣装が焼けたって報道で知ったんだろうね。ほかの噺家さんや知り合いのテレビ局のスタッフたちも、みんなピンクの衣装をくれるんです。
一昨日、パー子と歩いていたら、40~50代くらいのお兄ちゃんが、僕のポケットに1万円札を入れて、『足しにして』って。恥ずかしかったけど、みなさんの気持ちは本当にありがたいですよ」
そう語るのは、林家ペー(83)。
妻・林家パー子(77)と暮らしていたマンションで火災が起こったのは9月19日。本誌がペーをインタビューしたのは、それから数日後だったが、後始末に追われているためか、かなり憔悴していた。
「火事の日は(初代林家)三平の法事で出かけていたんだけど、参会者で記念撮影をしていたら、誰かの電話が鳴りだして。『誰のだ!?』って声を上げたら、僕の携帯だったの。
電話に出たら消防署員が『いまペーさんの家が焼けてます』って。慌ててタクシーを飛ばして帰ると、パー子が救急車に乗っていて、パニックになっていました。幸い、けがは火傷くらいだったんだけど……」
警察や消防の調査によれば、古いコードなどからの漏電による発火の可能性が高いという。
東京都北区の自宅マンションは約38平米で25年ほど前から暮らしていた。
「パー子の兄が持っていた部屋で、うちらは家賃を払って暮らしていたの。そのお兄さんが2年前ぐらいに亡くなって、パー子が相続したんです。
“終の棲家”というか、ずっと住むつもりだったし、老人ホームとかなんて考えたこともなかった。貯金? それがまるでナシ……。部屋に住み続けるなら、リフォームもしなければいけないのかな。でもお金はないし、どうすればいいのか……。
部屋には衣装や、撮りためてきた写真も大量にあったけど、焼け残ったのはいま着ているこの衣装や靴、それに仕事用のギターだけ。写真も2万枚の半分が、(消火のときに)水浸しになって。《ペー、写真が半分パー》とか書いていたメディアもあったけど、うまいこと言うよね(笑)」
火災の直後にペー夫妻は、同じマンションの住民に謝罪して回った。火事の“法的責任”について、「レイ法律事務所」の西山晴基弁護士に聞いた。
「失火責任法という法律があるのですが、“重過失”でない場合は、賠償責任を負う必要はないとされています。
“寝たばこ”など、火の発生を予見できたのに回避しなかった場合は重過失となります。しかしコンセントなどからの出火は予見できなかったとして、重過失とならなかった裁判例があるのです。ただ、ご近所とはしっかり話し合いをされたほうがよいかと思います」
