インタビューに応じた岩下志麻(写真:本誌写真部) 画像を見る

「ちょっと前に転んで膝にケガをしてしまって……。でも幸い、少しヒビが入っただけだったから回復して、今はもう大丈夫です。

 

以前、太極拳をやっていた時期があったのですが、その先生の指導の下で、今は気功を週1回やっています。朝は白湯を飲んで、ベッドの上でストレッチ。寝る前も必ず軽い運動をしています。おかげさまで、なんとか健康に過ごせております」

 

5月上旬の昼過ぎ、特徴的なデザインが施された端正な衣装で個人事務所の一室に現れたのは、女優の岩下志麻(85)。

 

ソファに腰かけた岩下は「陶芸が長年の趣味なの」と語り、お手製の湯飲みに入れたお茶を本誌記者に勧める。この日は一時、雨模様だったが午後から天気が回復。窓から差し込む柔らかい日差しが、今年で80代半ばを迎えた大女優を優雅に照らしていた。

 

’58年のデビュー以来、その麗しい美貌で数々の銀幕を彩ってきた岩下。『秋刀魚の味』(’62年)や『心中天網島』(’69年)など日本を代表する名作映画に出演してきたほか、’80年代以降は人気シリーズ『極道の妻たち』で新境地を開拓。現在に至るまで旺盛な女優活動を続けている。

 

しかし、昨年、そんな彼女を深い絶望に陥れる出来事があった。’25年3月25日、夫で映画監督の篠田正浩さんが、肺炎のため94歳で亡くなったのだ。

 

篠田さんの逝去から今月で1年と2カ月が経過する。長らく公の場に立っていなかった彼女だが、この日、最愛の夫を亡くしてからの日々を約1時間にわたって本誌に明かした。

 

「1年あまりがたちましたが、やっぱりまだ寂しくて……。いちばんつらいのは、食事のときに隣で食べてくれる人がいないこと。晩年、夜は毎日一緒に食事をしておりましたので……。

 

一人で食事をしていると“ああ、あの人はもう永遠にいないんだ”と、ふと彼の不在が脳裏をよぎるのです。篠田のいないテーブルの広さは、今も胸にこたえます」

 

岩下は、篠田さんの監督作品『乾いた湖』(’60年)への出演をきっかけに彼と出会い、後に交際に発展するように。

 

「初デートは、彼が監督した『暗殺』(’64年)のころ。監督として尊敬はしていましたが、当初、恋愛感情は全然ありませんでした。でも撮影を終えて、赤坂のナイトクラブで『暗殺』の打ち上げで篠田とマンボを踊っていたら突然、ふと“私、この人と結婚する”と閃いたのです。

 

踊りながら『私、監督さんと結婚しそうな気がします』と言ってしまったの。『ひどい清純派もいるもんだ、こうやって男を口説いているのか』と彼はびっくりして席に戻ってしまって(笑)」

 

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