「皇室のあり方や活動の基本は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽をともにすることだと考えており、こうした皇族数の確保のあり方についての議論においても、国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」
天皇陛下は6月11日、オランダ・ベルギー公式訪問を前に皇居・宮殿「石橋の間」で記者会見に臨まれた。国会で進められている皇族数確保の議論の受け止めについて質問され、天皇陛下は冒頭のように答えられたのだ。
「会見前日の10日、皇族数確保策をめぐる『立法府の総意』がとりまとめられ、(1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ案、(2)旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案、が『いずれも了』とされました。政府はこれを受け、皇室典範改正案を6月下旬までに閣議決定し、国会に上程する方向で調整が進められることになりました。
『立法府の総意』には“立法府として真摯に議論を重ねてきた”と述べてはいるものの、現状は、天皇陛下が述べられたような、”国民の理解が得られる”形になっているとは全く思えません。特に(2)案に関して、国民から批判の声が多く上がっているのです」(皇室担当記者)
各種メディアの世論調査によると、(1)案に賛成する人の割合は60~70%ほど、反対は10~20%ほどだが、(2)案に賛成する人の割合は40~50%ほどとなっており、反対も30~40%ほどと拮抗している結果も出ている。
「1947年に皇籍を離れた旧宮家の方々は、現在まで民間人として生活しています。さらに、現在の天皇家と旧宮家の共通の祖先は、約600年前、室町時代までさかのぼらなければなりません。国民に馴染みのない民間の男性が突然皇族となることに、強い抵抗を感じる人々が少なくないのでしょう」(前出・皇室担当記者)
このまま「立法府の総意」に沿った形で皇室典範が改正された場合、どのような事態が起こるのだろうか。名古屋大学大学院教授の河西秀哉さんはこう語る。
「これまでの皇室のあり方を支持していた人々から、“そっぽを向かれる”可能性があります。”天皇家の長女であり、国民とともに歩みを重ねられた愛子内親王殿下が天皇になれないなら、もう皇室なんていらない”という声も上がりかねません。
“国民と苦楽を共にする”という、平成以降に上皇ご夫妻、天皇皇后両陛下が積み上げてきた皇室のあり方が、もろくも崩れ去ってしまうかもしれないと感じています」
こういった声のほかにも、旧宮家の男系男子が養子として皇族に入った場合、国民の反発を呼ぶことも想像に難くないという。
「今まで知られていなかった人に対して、年額にして数千万円の皇族費が支払われるということを国民が知ったとき、受け入れられるのかどうか。また、旧宮家が今の皇室から相当に離れている事実に対して、国民がその人を皇族として認めるのかどうか。
いずれにしても国民にとって、皇室が今よりも遠い存在に感じられるようになってしまうのではないでしょうか。こういった点を考慮しても、さまざまなご活動を通じて、国民に寄り添おうと心がけて歩まれてきた戦後の皇室のなさりようとは異なります。そういった意味でも、“象徴天皇制の危機”につながる可能性があると思います」(前出・河西さん)
皇族数の減少を食い止めるための方法が、結果として皇室の存続そのものを揺るがすことに繋がってしまう――。そんな事態を避けるべく、政府や国会には慎重な議論を求めたい。
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