「これは単なる自民党県議の内紛ではありません。麻生太郎党副総裁、武田良太元総務相、そして藏内勇夫県議会議長――福岡県政を牛耳る3人の“三つ巴”の抗争が、ついに“表面化”したということです」
そう語るのは福岡県のベテラン自民党県議である。
発端となったのは、西日本新聞が7月5日に報じた、現職福岡県議による告発だった。告発に踏み切ったのは、元自民党の吉松源昭(もとあき)県議と江藤秀之県議だ。吉松県議は7日の記者会見で、自民党県議時代に議長と副議長の人事をめぐり、懇親会費やゴルフコンペ代、議会運営の“根回し”などの名目で総額2000万円超を支払ったと説明した。
「吉松県議は『応じなければ冷遇される。ポストから外されると思った』『逆らえば議長どころか自民党にもいられないと認識していた』と証言し、一連の金銭要求を『カツアゲ』と表現しました。受け渡しを指示したとされる中尾正幸副議長に、金銭要求を受けた際の録音データも公開され、14日、中尾副議長は自身の声であることは認めたものの、金銭要求そのものは否定しています」(県政担当記者)
福岡県議会ではこれまでにも、県職員に有力県議の政治資金パーティ券購入が半ば強制されていた問題や、1年8か月間で約1億4000万円を費やした海外視察が批判を浴びてきた。吉松県議は会見で、「県議からのカツアゲ文化が、パーティ券購入や税金による豪華海外視察といった、県職員や県民(税金)へのカツアゲへと広がった。この文化を断ち切らなければならない」と訴えた。
もっとも、自民党県議によれば、「今回の告発は義憤だけではない」との見方が支配的だ。
「吉松県議は2024年の衆院選で、自民党公認を得られず無所属で出馬して落選しています。その後、県議に返り咲いたものの、自民党会派への復帰は認められていません。吉松県議が公認を得られなかった背景には、現職の衆院議員で裏金問題でともに名前があがった宮内秀樹氏を推す、武田氏の強い意向があったとされています。つまり、吉松県議には武田氏へのわだかまりがあるんです。
そして、その吉松県議と会派を結成しているのは、県議歴11期を誇るベテラン、中村明彦県議です。中村県議は長年、自民党会派に所属して、麻生氏の“国家老”県議として知られてきましたが、2025年4月、自民党県議団が新会派を41人で結成した際、唯一、加入を認められず無会派となりました。その再編を主導したのが、藏内氏でした。今回の金銭要求問題では、直接、矢面に立たされてもいます。つまり、吉松県議らの今回の告発は、“反藏内”を公然と始める狼煙だった、とされているんです」
そもそも、自民党福岡県連は全国でも珍しい組織だ。県連会長は県議が務め、国会議員は最高顧問や特別顧問といった立場にとどまる。麻生氏は最高顧問、武田氏は特別顧問。つまり県連執行部は県議側が握っている。
「麻生氏と藏内氏は親しい、という見方もありますが、それは間違い。2011年の知事選では、出馬をすでに表明していた藏内氏を引かせ、麻生氏が通産官僚(当時)だった小川洋氏を無理やり党公認にして、当選させたといいます。その屈辱を藏内氏は忘れていません。じつは、2021年に小川氏が病に倒れ、次の知事として服部誠太郎氏を擁立した際は、藏内・武田ラインが主導し、麻生氏はほとんど影響力を発揮できませんでした」(同前)
永田町では、いまなお絶大な存在感を誇る麻生氏だが、地元の福岡では武田・藏内連合の前に劣勢が続いてきた。そんななか、2027年には県議選が控える。
「麻生氏には後継問題があります。有力視されているのは長男の将豊(まさひろ)氏ですが、このまま武田氏と藏内氏に福岡県連を支配されていたら、頭を下げて公認をもらわなくてはなりません。さらに、藏内氏の背後には今も大きな影響力を持つ古賀誠党元幹事長がいます。古賀氏は高市早苗政権後の首相候補である林芳正総務相の後見人的な立場。かりに林政権が誕生すれば、麻生氏は福岡はおろか、中央政界でも一気に立場を失います。
まずは、福岡を取り戻す。藏内氏を失脚させ、県連を掌握するために、中村県議を復権させるなど、使えるカードはすべて切ってくるでしょう」(同前)
「カツアゲ告発」で始まった今回の騒動。しかしその水面下では、福岡県政の実権をめぐる戦いが静かに巻き起こっているのかもしれない。
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