環境省と農林水産省が進めていた、外来種対策リストの改定案が土壇場で撤回されたことが物議を醸している。
きっかけとなったのは、「ノネコ」から「イエネコ」へ――。わずかな言葉の変更にも見えるこの表記をめぐり、「飼い猫や野良猫まで捕獲や駆除の対象になるのではないか」と、動物愛護団体や猫を愛する人々の間に大きな不安が広がったのだ。
「結局、行政や獣医師会に利権を生みたいがための改定案だったのかなと…。そう思われてなりません」
そう複雑な思いを明かすのは、日本動物虐待防止協会代表理事で、保護猫カフェを運営する藤村晃子氏(53)だ。
環境省と農水省は8月7日、生態系に影響を及ぼすおそれのある外来種をまとめた「生態系被害防止外来種リスト」改定案の撤回を発表した。全国紙政治部記者が語る。
「今回の改定では、野生化した猫を指す『ノネコ』の表記を、猫全般を示す『イエネコ』へ変更する案が報じられました。すると動物愛護団体などから、『飼い猫や野良猫が安易に捕獲されるおそれがある』という反対の声が殺到し、署名活動も広がったのです。
石原宏高環境相も、『家で飼っている猫まで、逃げたら殺処分されるような誤解を招く』として、急きょ見直しを表明しました。すでにパブリックコメントも終えた段階での撤回だけに、かなり異例の対応でした」
東ちづる(66)や杉本彩(58)ら芸能界からも反対の声が上がるなかで決まった今回の撤回。今回の改定案の問題点を、前出の藤村氏はこう考える。
「最大の懸念は、『猫は駆除対象だから』という誤った認識が広がることです。そうなれば、野良猫や飼い猫を捕獲したり、虐待したりすることまで正当化されかねません。
もともと動物愛護法では、飼い主のいない野良猫であっても愛護動物として保護の対象になっています。それなのに今回の案は、その考え方と真逆にも受け取れるものでした。そこに多くの人が強い違和感を覚えたのだと思います」
街角や公園、住宅街の片隅で暮らす猫たちめぐっては、各地でボランティアたちが地道な活動を続けてきた。なかでも代表的なのが、「TNR」活動だ。アルファベットは、それぞれ「Trap(トラップ)=傷つけないように捕まえること」「Neuter(ニューター)=動物病院での避妊・去勢手術」「Return(リターン)=体調回復後、元の場所に戻すこと」を意味している。
「私たち動物愛護活動をしている者は、TNRを長年コツコツと続けてきました。東京都千代田区などでは猫の殺処分ゼロを達成するなど、その成果も出ています。
もちろん、地域ごとにさまざまな課題があります。でも、命を一律に“駆除”する方向へ進むのではなく、これまで積み重ねてきた取り組みをどう生かしていくかを考えるべきではないでしょうか」(藤村氏)
