9月に主婦の友社より『50代のロッカーが毎朝せっせとお弁当作ってるってかっこ悪いことかもしれないけれど』という長いタイトルのお弁当本が刊行されました。光文社刊『パリのムスコめし』に次ぐ料理本第2弾になります。シングルファザーが決定した直後から今日まで朝ごはん弁当という習慣を続けてきました。毎朝作り続けたお弁当の中から129個をピックアップ、1冊にまとめたものです。
主に日本食ですが、まげわっぱの弁当箱に詰めて毎朝息子に手渡します。前の晩の残り物を再利用することが多いのですが、それでも毎朝の弁当作りは大変。思春期の息子との会話量も減り、離婚のあと、父一人子一人の生活ですからね、亀裂が入らないよう何かやらなければと考えてはじめたのがこの朝弁習慣です。しかし、これが意外と父子の関係を強くさせることになりました。食べたら片づける。弁当箱に入っている野菜は必ず食べる。歯を磨く。「パパも死にそうだけど頑張ってるんだからさ、君もおいしく頑張りなさい」と言ったのです。息子は息子なりに理解してくれてお弁当をよく食べてくれました。異国で暮らす日本人が祖国の味を忘れないために毎朝和食弁当を作り続けたわけです。刷り上がった本を手に取り、ページを捲ると、これが不思議なことに覚えているものなんですよね。このお弁当はピクニックの日に作ったものだ。これはバレーボールの試合の朝に作ったもの、これは期末テストの日に作ったもの、これは風邪で息子が寝込んでいた日に作ったもの、といった具合に……。だから、ページを捲りながら、不覚にもこの2年間の労苦を思い出し、目頭が熱くなってしまいました。
お弁当本ですけど、同時にこれは子育て奮闘日記であり、私小説であり、子供と向き合うハウツー本でもあるわけです。頑張ったな、自分! 自分を励ますことって大事ですよね。これからも息子に「もういいよ、お弁当なんか必要ないよ」と言われるまで作り続けてやろうと思っています。子育てに終わりはありません。
さて、今日はご飯にも、おうどんにも合う鶏味噌豆腐を作りましょう。本当は麻婆豆腐を食べたいのですけど、子供が辛すぎて食べられないので、麻婆豆腐のようなもの、を目指して我が家では鶏味噌豆腐が生まれました(笑)。
材料:鶏ひき肉300g、だしパック1個、木綿豆腐300g、水カップ、なす1本、みりん大さじ2、にんにく1かけ、酒大さじ2、生姜(スライス)2枚、味噌50g、豆板小さじ、だし油大さじ、サラダ油大さじ1、塩・こしょう少々、ごま油小さじ1、パクチー適量、お好みで柚子胡椒
1、なすは縦半分に切り皮に格子状に切り込みを入れ一口大に切る。にんにくは潰す。豆腐は1.5cm角に切る。2、深めのフライパンにサラダ油を入れ熱し、なすを加え炒め、取り出しておく。3、同じフライパンにごま油を入れ熱し、にんにく・生姜を香りが出るまで加熱し、豆板を加えさっと炒め合わせる。4、3に鶏ひき肉を入れ中火で色が変わるまでほぐしながら炒め、みりん・酒・水・だしパックを加え一煮立ちさせる。5、4に豆腐と2のなすを加え、味噌を溶き入れ、だし油を加え中火で水分が半量くらいになるまで煮る。塩・こしょうで味を調える。6、温かいご飯にかけて、さらにパクチーを添えてお召し上がりください。お好みで豆板を増やせば、何となく麻婆豆腐に近づきます。柚子胡椒もとっても合いますよ! お子さんの分を取り分けた後、大人は辛くしちゃいましょう。
ボナペティ!
エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!
『50代のロッカーが毎朝せっせとお弁当作ってるってかっこ悪いことかもしれないけれど』(主婦の友社、1,400円+税)絶賛販売中。