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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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女の子には気合を入れて晴れの衣装を身にまとう日がある。
夏祭りには浴衣、成人式には振袖、卒業式には袴…。
洋装が普段着になった今でも続く日本の伝統だ。
しかしそれも、ちょっとずつ変わってきているらしい。
決まった形に捕らわれず、自分なりの「可愛い」をアレンジしてプラスオンするのが今流。
一昔前は「ミニ浴衣」と呼ばれる短い丈で足を露出するタイプの浴衣が流行った。
襦袢をレースにしたり、パステルカラーの着物が登場したり、生地が麻やデニムでできていたりと「伝統」に捕らわれない「可愛さ」の追求…。
今特に目立つのは「花魁風」だ。
派手な着物を襟で抜き、髪を豪華に飾る。
夏祭りでも成人式でも卒業式でも、浴衣や着物を「花魁風」に仕立てる女子が少なくないのだ。
京都でも「舞妓体験」のみならず「花魁体験」ができると聞いて、わたしは京都へ飛んだ。

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京都駅から歩いて10分…写真スタジオ「夢工房」さんにやってきた。

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ここで花魁体験ができるという。
成人式でも写真を撮らなかったわたしにとって、人生で数えるほどしか入ったことのない写真スタジオ…!
和の雰囲気に満ちたスタジオ内を通り抜け、メイクルームへと潜入した。
着物用肌着を身に着け、髪の毛をヘアネットに収納したらさっそくメイクから始まる。
「化粧師(けわいし)」と呼ばれるプロのメイクアップアーティストさんが、あれよあれよという間に地味めな顔立ちのわたしをド派手花魁フェイスに…!

お化粧には、実際の舞妓さんも使っている水化粧(白粉を水で溶いたものを刷毛で顔に塗っていく手法)を採用。
顔を真っ白にせず、ナチュラルな白で顔をスッキリさせていく。肌への刺激も少ないらしく、現代人も大満足の変身方法なのだ。
つけまつげで目をぱっちり大きく見せるのも現代流。
目の周りをぽんわり赤くし、赤いアイラインを引いて、唇を赤く塗れば、
白と赤のコントラストが印象的な花魁が誕生する。
鏡を見て「どなたですか…?」と問いたくなるような変身っぷりだ…!

着物は100着以上の中から選ぶことができる。ほとんど宝探しに近い。
わたしは2着に絞ったものの1つが選べず、着付けのお姉さんたちに相談して回った。
悩みに悩んでついに1着を決定…!決まりさえすれば、あっという間に着付けてくれる。
プロの瞬間技が炸裂するぞ!!

ついに、かつらをかぶって花魁の完成である…!
はじめ余りにかつらが重く、あちこちへ頭がふらふら…。首が脆弱なわたしには、荷が重い「花魁かつら」。
しかしわたしは花魁…!
弱みを見せず、凛として立ってこそ花魁じゃないのか!!??
目覚めろ花魁魂…!!!!
わたしは心の中の花魁を目覚めさせ、重さに耐えることに成功した。

変身タイムを経て、スタジオへと臨む。

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写真を撮ってくれるのも、もちろんプロのカメラマンに本気の機材。
まるで遊郭のような雰囲気漂うスタジオで笠やキセルなどの小道具を使いながら撮影を進める。
雰囲気が漂いすぎてド緊張だよ…!
打ち震えるわたしを見て、気さくなカメラマンがたくさん声をかけて盛り上げてくれた。
徐々にほぐれていく心。どんどん自分が解き放たれていく…!

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妖しげなライトを浴びながら、ポーズを変えカシャカシャ写真を撮られまくり自分の中の何かが芽生えた時間だった。

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ガチカメラの撮影が終わっても、気が済むまで携帯で写メが撮れる。
こんな体験滅多にできないんだ…!と思うとついつい撮りまくってしまい、うんざりするくらいフォルダが自分で埋まる。

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お前ビックリするくらい自分大好きやないか!!
でもたまにはそんな時があったっていいよね。
気が済んだら、寂しい気持ちを抱きながら衣装を脱いで化粧を落とし、元の自分へと戻る。
2時間ほどの夢のような時間だった。

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「なぜ花魁なのか?」という疑問は各所からあげられる。
そう思う人が少なくないだろう。花魁は「位の高い遊女」のことを指す。
なかば芸能人レベルの人気者も中にはいたものの、「遊女」であったことは間違いないからだ。
夢工房の方にその疑問をぶつけてみた。
「着物を知っていれば知っているほど、抵抗がある人も少なくないですよね。うちも最初は古典花魁だけだったんですが、5年ほど前にこういった花魁体験を始めました。お客さんが楽しければいい、という気持ちからです。時代によって着こなしが変わっていくのは自然なことなので、これも着物文化の進化なのかなと思います。体験をする人にとっては“花魁になる”というよりは、“可愛く見せる”手法のひとつ。かわいくなって、写真に残したい。自慢したい。そんな変身願望を叶えられるのが花魁体験。ストレス解消になった、という意見もよくいただきます。皆さん、“花魁”という存在を用いて秘めてるモノを解放しているのかもしれません」
体験で感じた“非日常感”。
わたしであってわたしじゃなかったあの2時間…。
普段はありえないような鮮明な色彩のなか、決してすることのない扇情的な着こなしをして、別の自分を解放する。
変わったことをすると白い目で見られがちな日本社会、花魁はかわいいフィルターを通して世間に発信できるアンチテーゼなのかもしれない。

深い。

ただ肩を出して露出する安っぽいセクシーの「花魁風」も少なくはないが、
本気の「花魁」は知られざる自己を解放できる魔法のツールだったということがわかった!!

 

フォトスタジオ「夢工房」京都駅前本店
京都市下京区南町511 夢工房ビル
花魁体験はキャンペーン価格5,000円~!
※本文の写真の中には移転前のものも含みます。

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。

公式サイト http://yonusa.wix.com/4bunno1
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