「オブシディアン」という石は和名を「黒曜石(黒燿石・こくようせき)」と言います。面白いことにこの石は、「鉱物」の分類には入らないものなのです。普段、私たちは「宝石」や「パワーストーン」を語るとき、「石」とか「岩」とか「鉱物」といった言葉をほぼ同義語のように使っています。でも、専門的な見地からすると、その概念ははっきりと異なっているのです。

まず「石」というのは「岩」が砕けたり、水流で削られたりした「岩の小片」で、さらに小片となったものが「砂」です。ですから「石」と「岩」は大きいか小さいかの違いがあるだけで、言わば同じもの。学術的用語としては「岩石」という言葉が使われます。この「岩石」に関してもう少しお話ししましょう。「岩石」はその成因によって3つのタイプに分かれます。ひとつは「火成岩」と呼ばれ、これは地中のマグマが火山活動などで地表に吹き出し、冷えて固まったものです。2番目は「堆積岩」で、「火成岩」が長い年月をかけて風化・浸食され、水流によって流されて海底などに堆積したもの。あとのひとつは「変成岩」。「堆積岩」がプレートの移動などで海底から地中に入り込み熱や圧力を受け、それまでの堆積岩とは異なった岩石に変成したものです。

Stone_081218 では、「鉱物」とはどういう概念の言葉なのでしょうか? 実は「鉱物」も「岩石」を構成しますが、「鉱物」と呼べる石には次のような特徴があります。それは「特定の化学組成と固有の結晶構造」を持っているということです。冒頭で「オブシディアンは鉱物の分類に入らない石です」とお断りしたのは、「オブシディアン」には「特定の化学組成と固有の結晶構造がない岩石」であるからなんですね。さらに岩石の分類で言えば、「オブシディアン」は「火成岩」に属します。その証拠に、「オブシディアン」は世界各地の火山地帯から産出されているのです。

では、「固有の結晶構造を持たない」という性質はどこから生じたのでしょうか? それは、この岩石の生成過程にあります。火山性の溶岩が地表で冷却される際、結晶ができる前に急速に冷却・固化されると、非結晶質の天然のガラスが生成されます。できた天然ガラスは半透明ないし不透明のガラス光沢をもち、その破片は非常に鋭利な貝殻状を示します。「オブシディアン」に含まれる主な成分は二酸化ケイ素ですが、他の元素の含有量によって色や模様にいろいろな変化が現れます。

一般的な「オブシディアン」の色は黒ですが、褐色や灰色のものもあり、まれには赤色、青色、緑色のものもあります。一方、「オブシディアン」に「クリストパライト」が内包されている場合は、黒地に淡い白の斑点が見られます。この斑点が細かなものは「スノーフレークオブシディアン」と言い、大き目の斑点がある場合は「フラワーオブシディアン」と言われています。

「オブシディアン」は鋭利な断口とガラス質であるという特徴から、有史以前から人類に利用されてきました。また、パワーストーンとしての効用も認められています。次回は、こうした「オブシディアン」の素晴らしいプロフィールについてお話ししましょう。

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