もうすぐ息子くん、中学4年生に進級します。フランスは中学が4年間あるんです。あと半年もすると15歳に。シングルファザーになった時、息子は10歳になったばかりでしたから、5年近く経ったことになりますね。私も、シングルファザー5年生になるわけですね。光陰矢の如し。
長く続けてきたこの「ムスコ飯」もそろそろ最終回、この秋から新連載がスタートします。今度の連載は人生相談なので、奥様方のお悩みをどしどし募集しておりますぞ。それにしても、読者の皆様には本当に励まされてきました。全国各地に仕事で行きますと、その先々で「『女性自身』読んでいます。頑張ってくださいね。息子さんによろしく」と声を掛けられます。この連載のおかげで私も息子もなんとか小さな家族を維持することができてきました。本当に感謝しかありません。
先日、息子と子供部屋を片付けておりましたら、幸せだった時代の家族写真が出てきて、その時の息子の動揺に私は驚いてしまいました。しっかりした子なのですが、心にはまだ10歳の自分が居座っているようです。当時の心の傷をいまだ引きずっていたことを改めて知り、私も衝撃を受けました。慰める言葉の代わりに、ムスコ飯ですからね、その日は彼の好物の料理をずらりとテーブルに並べてやった父ちゃんです。
来年はいよいよ高校生、また違った環境がスタートしますし、その3年後には大学受験が待っています。そうして少しずつ、彼は自分の歴史と折り合っていくのでしょう。私だって人間ですから、泣きたくなるような日もありましたし、正直な話をすると、子育てを放棄したいと思う寂しい夜もありました。父と子の2人暮らしですからね、頑張るしかないんです。でも、息子の後ろ姿を見ていると、かわいいなあ、と幸せな気持ちになります。来年、60歳になる父ちゃんは老骨に鞭打ってこれからも頑張りますよ。
そうだ、2人きりの生活がはじまった直後、2人でストラスブールに旅行をしました。そこでこれからのことをたくさん話し合ったのです。その時、息子が私に言った言葉が忘れられません。「パパ、ぼくはね、大人になったら幸せな家族を作るんだ。奥さんと2人の子供がいて、4人家族なんだ。毎日、笑顔がたえない家庭なんだよ。パパも遊びに来てね」。あれは幸せの決意表明だったに違いありません。すまない、と心の中で思い、彼の肩をぎゅっと抱き寄せました。私は微笑んでいましたが、心の中では号泣していたのです。
さて、今日のムスコ飯の一皿は超爽やかな美味しさ「ブラータとミントのサラダ」をご紹介します。最近、たまに飲みに行くビールバーで出された一品でして、あまりに美味しかったのでちょっとアレンジして真似てみました。カクテルなんかに最適ですよ。
材料:ブラータチーズ1個(200〜250g)、きゅうり1本、ミニトマト6個、ミント2束、粉山椒・黒七味・こしょう・ゲランドの塩(なければ岩塩)各適量、オリーブオイル大さじ3、実山椒適量。
まず、きゅうりは布またはキッチンペーパーにくるんで麺棒などで叩きます(私はげんこつで叩き潰します。その方が繊維が自然に破壊されて美味しいです)。ひと口大に崩れたきゅうりの水気をよくふき取り、ボウルに移します。そこに小さく切ったブラータとミント、粉山椒、黒七味、こしょう、ゲランドの塩、オリーブオイル大さじ2を入れ、さっと混ぜます。お皿に盛ったら、最後にトマト、実山椒を散らして完成です。出す前に、もう一度残りのオリーブオイルをふりかけてください。
疲れて帰ってきた旦那さんに何かちょっと気の利いた一皿をどうですか?
ボナペティ!
【お知らせ】
この秋から、辻仁成さんによる新連載の人生相談「悩めるマダムたちへ――JINSEIのスパイス!」がスタートします。人生経験豊富な辻さんが、恋愛から家事・育児、夫への愚痴まで、みなさんの日頃の悩みにお答えします!お悩みは、メール(jinseinospice@gmail.com)、Twitter(女性自身連載「JINSEIのスパイス!」お悩み募集係【公式】@jinseinospice)、またはお便り(〒112-8011 東京都文京区音羽1-16-6『女性自身』編集部宛)にて絶賛募集中。性別と年齢、居住地を明記の上、お送りください。
※「ムスコ飯」エッセイはまもなく最終回を迎えますが、レシピのみWEB女性自身では引き続き掲載予定です。