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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第26回>

TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

私には40代前半の一人息子がいるのですが、息子の月収は低く、彼が結婚して一年後くらいに一軒家を新築するときはお金の援助をしました。その後も毎月仕送りをしています。しかし、息子の嫁はなかなか働いてくれず、何度かアドバイスはしたのですが、まったく仕事をする気がない様子。ついに私が今まで貯めてきたお金も底をついてきて困っているのですが、今後いったいどうしたらいいのでしょうか。(女性・68歳・専業主婦)

 

【回答】

まあ、あなたさま! 動物は知能も仕組みも高度になればなるほど親離れが遅れる傾向にあるといいますが、現代社会はまさにその通りですね。親として、存分にすねをかじらせてやるというのも醍醐味のひとつでしょう。

 

ただ、貯めたお金が底をついてしまうようでは、本当に困ります。あなたさまもこれから、いわゆる「老後」をお迎えになるわけで、そのための備えも必要でしょう。かわいい一人息子さんはあてにできませんからね。

 

さて、拝読していて思いましたこと、ふたつほどお伝えさせてください。

 

ひとつめ、矛先が違う気がいたします。「息子の嫁がなかなか働いてくれず、まったく仕事をする気がない様子」とのことですが、あなたさま、まさかお嫁さんにまで息子さんにすねを差し出せというのではないですよね。親としてあなたがものを言うべき相手は息子さんですよ。それを飛び越えてお嫁さんに矛先を向けてしまうのは、いかがなものでしょう。

 

ふたつめ、困っていらっしゃるなら、困らないようにいたしましょう。つまり、出て行くお金を抑える=息子さんへの月々の仕送りをやめる、です。

 

私は高野山で修行をしたのですが、運がよいとごくたまーにチョコレートの差し入れをいただいたりしたものです。手に入れたときは、それはそれは大事に少しずつかじりました。人は、なければないなりになんとかするものです。毎月決まって援助なさっているあなたさまの優しさが、いまの息子さん、お嫁さんをつくっているのです。

 

変化というのは伝播します。あなたが変われば、息子さんが変わる。息子さんが変われば、お嫁さんが変わる。こんなふうにじわじわと伝わっていくものです。あなたが変わらずに息子さん、お嫁さんが変わるものですか。さあ、思い切って、手を引いてみてください。子離れするのも親の醍醐味です。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)

看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。

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