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川崎市幸区の有料老人ホーム『Sアミーユ川崎幸町』で、入所者3人が次々に“謎の転落死”を遂げてから約1年。元介護職員・今井隼人容疑者(23)が逮捕されたのは2月15日のことだった。社会部記者は言う。

 

「今井容疑者は、丑沢民雄さん(享年87)以外の2人の女性の殺害も認めています。彼は転落事件があったすべての日に夜勤に就いており、警察だけではなくマスコミからもずっとマークされていました。しかし度重なる直撃取材にも彼は平然と犯行を否定し続けていたのです。容疑者は殺害動機として『丑沢さんは動き回り世話が大変だった』『夜勤が多く仕事のストレスが溜まっていた』などとも供述していますが、身勝手極まりない主張です」

 

彼は、Sアミーユ川崎幸町では窃盗も繰り返しており、昨年9月には有罪判決も受けている。入居者が留守の間に部屋に侵入し、現金や指輪などを盗むという単純な手口だ。公判中、裁判長が「『お金を盗まれたみたい』と被害を訴える人たちを、あなたはどんな気持ちで介護していたのですか?」と厳しく尋ねると、彼は無表情にこう答えた。

 

「目の前の入居者たちがお金を持っていると思うと、盗みたくなったのです。同僚にお金を持っているところを見せたい、見栄を張りたいとも思っていました……」

 

精神科医の日向野春総・ヒガノクリニック院長は言う。

 

「今井容疑者の言動から感じられるのは、ウソをついてでも他人から一目置かれたいという“肥大した自己愛”です。また、お金がなくなれば入居者から盗ればいい、言うことを聞かない入居者は突き落せばいい……、まるで老人たちを“モノ扱い”していたようです。 甘やかされて育つと、“自分さえよければいい”という自己愛的性格に育ちがちですが、今井容疑者の場合も、家庭教育に問題があったのではないでしょうか……」

 

今井容疑者は電器店を経営していた父、そして保育士の母のもとで育った。母は横浜市内にある保育園の園長を務めているが、今井容疑者の逮捕後は、仕事を休んでいるという。

 

「(今井容疑者の母は)経歴30年のベテラン保育士で、2年前から園長を務めています。勤務状況もしっかりしています。休業の理由は、体調不良と聞いています」(横浜市の担当者)

 

実は窃盗事件で、被害者たちに弁済したのは、今井容疑者の母だった。

 

「親戚にお金を借りて被害額の200万円用立てたと、母親は話していました。公判後、今井容疑者と母親は裁判所から歩いて自宅に帰ったのですが、報道陣に取り囲まれながら歩く息子を守るように寄り添う母親の姿は印象的でしたね。今井容疑者は逮捕直前、殺害事件のことを母親に相談したそうです。しかしそれまで世間から疑惑の目を向けられている息子を問い詰めることは考えなかったのでしょうか」(前出・社会部記者)

 

この母子関係について、臨床心理士の矢幡洋さんは、次のように語る。

 

「窃盗の公判で、今井容疑者は『バレないと思った』と陳述しています。突き落としに関しても『バレなければいい』と考えていたのでしょうが、彼の社会性は相当未熟です。母親は彼に対してかなり甘かったようです。子供が何の努力をしていないのにむやみに褒め続けると、子供は自己愛を肥大させ、『僕は特別な存在だから何をしてもいい』という勘違いをするケースがありますが、今井容疑者の場合もそうだったのではないでしょうか」

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