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「どの世論調査を見ても、明らかに反対の意見が多い。それでも強行するって……結局、あの人たちは、国民の意見なんて最初から聞く気がないんだなって、そう思いましたね」

 

抗議デモ終了後、怒りと疲れがないまぜになった表情で、夜の闇に沈む国会議事堂を見つめながら、学生団体「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基さん(23)は呟いた。

 

今週中にも成立が見込まれている安全保障関連法案。国は、集団的自衛権の行使を戦後初めて容認することになる。

 

「法案が通っても絶望なんてしている場合じゃない。声は上げ続けないといけないと思っています。それはぼくらシールズかもしれないし、もっと新しい、違う人たちが出てくるかもしれない。いま声を上げてる高校生たちが、ぼくらよりもっとスマートに、力強く動きだすかもしれない」(奥田さん)

 

「数の論理からいえば法案が通るのは仕方ないが、使えなくすることは可能だ」と話すのは、国際地政学研究所理事長の柳澤協二さん(68)。柳澤さんが官邸の内側にいた、福田内閣でのこと。

 

「当時は、いわゆるねじれ国会。国会の承認が必要な日銀総裁人事で、福田さんは大変ご苦労された。参院で多数を占める野党がなかなか首を縦に振らず、後任を長いこと決められなかった。それと同じ手が使えるんです」(柳澤さん)

 

法案を成立させる際には、いわゆる「60日ルール」が適用可能だ。参議院が否決しても、あるいは60日以内に議決しなくても、再び衆議院に戻されて3分の2以上の賛成で可決できる。しかし……。

 

「国会承認の場合、そのルールはない。そして衆議院、参議院は同等の権利を持っていて、両院での承認が必要です。そして今度の法律で自衛隊に新たな任務を課すとき、とくに海外に出すときには、この国会承認が必要なんです」(柳澤さん)。

 

つまり、来年夏の参議院選挙で、安保法制に反対する勢力が過半数を占めることになれば、結果的に法律が使えない状況に追いやれるのだ。前出の奥田さんは、本誌読者に代表される女性たちこそ、「今後がかかっている」と語る。

 

「ママの会など、女性が主体の団体が賛同してくれたことで、安保法案反対の動きは一気に広まりました。お母さんをはじめとした女性たちの持っているコミュニティの力が、今回の社会運動に大きなインパクトになったと思います」(奥田さん)

 

安保法案は通っても、民意で使わせないことはできる。私たち一人ひとりが、未来を左右する鍵を握っているのだ。

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