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時代は、確実に女性の力を求めている。ドイツ、イギリス、韓国、台湾、ミャンマー……。今、世界各国で相次いで女性リーダーたちが活躍している。時代は確実に変わっている。

 

「ガラスの天井」とは、’80年代にアメリカで生まれた造語で、「ある組織のなかで、女性やマイノリティが直面する、実力とは関係なくキャリアアップを妨げる障壁」を意味する。立ち上がればガラスが粉々に割れ、自らも深い傷を負ってしまう。そんな、もろく危険な「ガラスの天井」に、女性たちは頭を押さえつけられてきた。だが今、女性たちは、その「ガラスの天井」を突き破り始めている。

 

この流れは、世界にどんな変化をもたらすのだろうか。そして、真に男女が等しく活躍できる時代はやってくるのだろうか。世界の女性トップたちの動きのなかに、その答えを探してみよう。

 

国際社会のなかで「女性リーダー」として、まず思い浮かぶのは誰か?それは、やはりドイツのメルケル首相(62)ではないだろうか。ドイツ初の女性首相は、就任以来、数々の難題を抱えつつも政権を安定して運営している。「ドイツのお母さん」というニックネームで呼ばれている女性だが、そのあだ名ののんきさとは裏腹に、激動の時代を生き抜いてきた闘士である。

 

現在62歳のメルケル首相は、小学生のころに父親の仕事の都合で東ドイツに移住。その数年後に、あの「ベルリンの壁」が作られた。そして、政界入りしたのは1989年、ベルリンの壁が崩壊した年のことだった。

 

「メルケル首相は、女性の権利を強く主張してきたフェミニストではありません。しかし、たとえば移民・難民の問題一つとっても、きっちりと立場を明らかにして推進しています。移民政策の場合、市民のなかにも強い反対派がいて、政界でもそうした反対意見を主張する勢力がいる。それでもメルケル首相は決してブレない。男性政治家たちの『力学』のアウトサーダーであるがゆえに、ひきずられることがないんです」

 

そう話すのは、ジェンダーと政治に詳しい三浦まり・上智大学教授。実は、9月に行われたベルリンの市議会議員選挙で、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は大敗した。敗北について彼女は「移民政策の影響」を認めたが、移民政策そのものについては「全体としてまったく正しかった」と一歩も譲らなかった。こうした強さは、「女性ならではのしがらみのなさ」が一つの理由なのだろう。

 

そんなメルケル首相と、ある政策でつながるのが、台湾の蔡英文総統だ。

 

「台湾で女性として初めて総統になった蔡氏は、『脱原発』を打ち出しました。脱原発はメルケル首相も明言している政策です。エネルギー政策は、経済界と密接に結びついた問題であり、強固なしがらみのある分野。そんな縛りをものともせず、きっぱりと主張できるのは、女性リーダーだからこそともいえます」(三浦教授)

 

男性政治家同士のしがらみから解放されている、という女性リーダーの特質は、テリーザ・メイ首相も持っている。イギリスで女性として2人目の首相に就任したメイ首相は、「氷の女王」というニックネームで知られている。

 

「メイ首相は、政治家同士のなれ合いを嫌っています。政治家同士で酒を飲んだりすることはしない、とも明言している。その一方で、あまり自分の考えを表に出さないので、はたして女性にとってどれだけ進歩が期待できるのか、そこは静観していたほうがよさそうです」(政治ジャーナリスト)

 

たしかに、すくなくともエネルギー政策については、新規の原発建設を承認するなど、同じ女性リーダーといってもメルケル首相や蔡総裁とは立ち位置が異なる。しかし、感情を表に出さない「氷の女王」だけに、「何が起こるかわからない」(政治ジャーナリスト)ともいえる。

 

おそらくこれから世界には、より多くの女性リーダーたちが登場するのだろうが、20世紀に入ってようやく認められた女性の参政権がいまだに認められていない国も存在する。その意味では、世界はまだまだガラスの天井に覆われているのだ。さらに多くの女性がこの天井を突き破るためには、まだまだ多くの困難が待ち構えていると言えるだろう。