2月の施政方針演説で、安倍首相が「安全が確認された原発は再稼働」と明言した。これに対し「この秋にも原発再稼働という動きが現実化してきている。とんでもない話です」と憤るのは「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)」の委員を務めた田中三彦さん(科学ジャーナリスト)。福島第一4号機の原子炉圧力容器の設計などに関わった原発の専門家だ。

 

今後、原発の再稼働はどうすべきか?自らが原子炉設計に関わった自戒をこめ、田中さんは言い切る。

 

「まず1980年ごろまでに設計施工された原子炉は即廃炉です」

 

その根拠とするのが、時代によって4段階ある日本の原発の構造技術ガイドライン。1970年までの原発黎明期では普通の化学プラント(石油コンビナートなど)と同じ技術基準が使われていた。耐震設計に対する公の指針は存在しない。’70〜’80年は、’65年に米国で作成されたガイドラインを翻訳した『告示501』によって設計、製造された。美浜2号機よりこの基準に沿っている。耐震設計に対する公の指針は存在しない。

 

’80〜2004年、’80年に作られた『(新)告示501』にしたがって設計、製造。原子力安全委員会が策定した「耐震設計審査指針」が使われるようになった。’05年〜現在は、新「耐震設計審査指針」と新体系の技術基準を導入。しかし、この時期に設計され完成した原発はまだない。

 

「現在の技術レベルから見ると、’80年ごろまでに設計された原発は耐震基準がいい加減で、地震に対する基礎耐力がない。福島第一がその不幸な例。だから’80年ごろまでに運転を開始したものは即廃棄です」(田中さん)

 

『(新)告示501』以降のものに関しては、最新の『耐震設計審査指針』に照らしてチェックしなおし、そのうえで再稼働を議論するのが筋だという。

 

「ただし、今も増え続けている放射性廃棄物の処理の仕方が決まっていないのですから、少なくとも2020年〜’30年までには原発ゼロという目標を立てるのが先決でしょう」(田中さん)

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