「毎日、布団を干すのは面倒臭い」。そんな主婦を中心に人気なのが、レイコップ社の開発した『ふとんクリーナーレイコップ』だ。光線(レイ)でダニを弱らせて吸い取り、布団を見守る警察(コップ)、というのが名前の由来。開発したのはソウル生まれの、レイコップ・ジャパン代表取締役社長で元内科医の李誠晋(リ・ソンジン)さん。いったい、なぜ医師がふとんクリーナーを開発したのだろうか?

 

「韓国でも多くの人がアレルギーで苦しんでいます。原因の多くは布団のハウスダスト。わかっているのだから、根本的な対策ができないかという気持ちが高じていきました。医者として大事なのは、患者への献身と予防活動。このふたつがいっしょにできることはないかと考えたのです」(李さん・以下同)

 

李さんの父親はソウルで製造業を営む。李さんも幼いころからモノ作りの現場を見て育ち、興味を持っていた。そこで一念発起し、医師を辞めて父の会社に入る決断をする。だが父の会社では、家電製品作りは初めての経験。しかも今までなかった製品を一から作り上げるのだから、難しさは半端なものではなかった。

 

途中、開発費が足りず、父に融資を願い出たが経営に厳しい父には断られ、結局、家を担保に銀行で借金をすることに。ようやく製品が完成しても、今度は販売という難問が立ちはだかった。無名の会社が作った、見たこともない製品が受け入れられるまでは大変だった。

 

「韓国のマンションには『住人会』があるのですが、そこの会長を説得し、入口でデモンストレーションをさせてもらったりしました。まず使ってもらい、気に入ったら購入していただく。気に入らなければ返品してください、と。ほかに方法がなかったのです」

 

その結果、返品はわずか3割だった。やがて、口コミで製品のよさが広まり、徐々にブレイク。日本では’12年2月に発売が始まり、’13年10月までの累計で75万台を販売している。

 

「何度もくじけそうになりました。しかしこれは、世の中に貢献できる製品です。私だけでなく、開発に関わったほかのメンバーにも、そういう哲学と信念があったので、乗り越えることができました」

 

李さんの人を救いたいという気持ちは、医師であったときと何も変わっていない。

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