「デパ地下」という言葉が広まってから約30年。各デパートでは、ニューオープンや大規模リニューアルが相次いでいる。また、定番のお菓子のプレミアム商品化も話題になっていて、平日でも平均3時間超の行列ができているとか。デパ地下グルメのブームは10年おきにくるという。そこで、デパ地下グルメの歴史を4つの時代に分けて振り返る。

 

【’80年代】

時代はバブル前夜。すべてが急ピッチで動いていたころ、街に新たな人の流れを作ったのが、西武池袋本店地下の食品フロアだった。当時、ひときわ注目を集めたのが、サクサクの食感で中はしっとり、パクッと一口で食べられるサイズのミニクロワッサンだ。三越を中心に展開するベーカリーショップ「ジョアン」1号店が、’83年5月に銀座三越にオープンするや、瞬く間に大流行。焼きたてを求める人で店頭は大にぎわいに。

 

【’90年代】

’90年代になるとデパ地下に若い女性が増え始める。後のスイーツブームの先駆けとなったティラミスやクリーム・ブリュレが登場。テレビ番組『料理の鉄人』(フジテレビ)をきっかけに料理人がクローズアップされはじめ、シェフ名を前面に出した商品も注目される。

 

また、珍しいスイーツを求めるOLや共働き世帯を中心に、デパートのお惣菜が日常的に利用されるようになる。生鮮食品やお弁当売場もにぎわいを見せ、“B1グルメ”の名が生まれた。

 

【’00年代】

21世紀に入りデパ地下にも大きな変化が。まず’00年4月、渋谷・東急百貨店東横店の地下食品街「東急フードショー」がオープン。初出店のテナントを増やし、「その場で揚げる」などエンタテインメント性を強く打ち出した。さらに’90年代から続くスイーツブームの中、クイニーアマン、ベルギーワッフル、カヌレなど“知られざるヨーロッパの味”も行列を呼んだ。

 

一方で懐かしくて安心感のあるプリンやロールケーキなどが再び脚光を浴びる。’00年後半にはマンゴープリンや、「アンリ・ルルー」の塩キャラメルなど、定番に“新しい味”を加えたスイーツも流行した。

 

【’10年代】

この数年間でプレミアム感のある手土産として大ヒットしたのはモンシェールの堂島ロール。’03年11月に大阪で誕生、’07年銀座三越に出店して全国区になった。また’07年に松屋銀座に入った「ガトーフェスタハラダ」のラスクも2時間待ちの行列を生み、日保ちするからと、出張仕事の手土産としても好評を博す。

 

ifs未来研究所所長の川島蓉子さんは、お中元やお歳暮の習慣がなくなりつつあることを背景に、デパ地下が、カジュアルでパーソナルなギフトを探す場所として重宝されるようになったと分析する。

 

「デパ地下が最も勢いをつけたのは’80年代でしょうね。バブルでデパート業界全体の景気もよかったし、加えて、各デパートが競って“新しいものを仕掛ける”というスタイルの土台ができました。今後の『行列』は、ますますバラエティに富んで短命になっていくと思われます。その中で長く愛される商品の意味も大きい。クオリティを重視するデパートだからこそ、安心して“迷える”のです」

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