「夜の睡眠時間を確保したりきちんと熟睡することは大切ですが、それが困難な現代社会の人たちには、定期的な昼寝を生活に取り入れることをオススメします。昼寝は心身ともによい効果が得られます。お金もかからず、どこでもできる昼寝は、いいことずくめなんです」

 

そう話すのは、久留米大学・神経精神医学講座の睡眠研究をしている内村直尚医学部長。’03年より福岡県立明善高校で導入された「午睡(昼寝)」を指導・研究している昼寝のエキスパートだ。

 

「高校で昼寝の取り組みをするのは、全国初の試みでした。昼食後の昼休みのうち15分間、モーツァルトのBGMを流し、高校生に昼寝をしてもらったんです。その取り組みは効果を上げ、現在に至るまでもう11年続いています」(内村先生・以下同)

 

明善高校は文武両道、県内有数の進学校。昼寝導入以降、3年間の調査で、大学入試センター試験の成績が明らかに上がったという。

 

「導入以前、眠くて午後の授業に身が入らない生徒が多かったとのことですが、昼寝をすることにより、眠気が取れて、意欲が高まる生徒が増加しました。午後の授業にも集中できるようになり、センター試験の成績が上がったのです」

 

その結果、明善高校は東京大学を含む難関国立大学の合格率が飛躍的に上がり国公立大の医学部医学科の合格者も増加している。

 

「午後から眠くなってくると、集中力がなくなって夕方にけがをしたりしがちでしたが、昼寝導入後は保健室の利用者も減りました。心身の体調不良を訴える生徒が少なくなり、体育の授業や部活動などでのけがも減り、部活動の成績も上がったんです」

 

昼寝の効果について、内村先生は「注意力・集中力・記憶力UP」「勉強や仕事の効率が上がる」「高血圧や糖尿病の予防に「心臓病による突然死のリスク減」「高齢者の認知症予防」「ダイエット効果がある」「美肌効果がある」「夜の睡眠の質が高まる」を挙げている。では、どんな昼寝の方法が有効なのか。内村先生に聞いた「いい昼寝のコツ」は次の5つ。

 

【1】15時までに終わらせる。

【2】深い睡眠にならぬよう、椅子に座って寄りかかったり、机にうつぶせたりする姿勢がオススメ。

【3】リラックスできるよう、ベルトをゆるめたり靴を脱いだりして、締め付けを緩和する。

【4】昼寝をする前にコーヒー(カフェインの入ったもの)を飲む。

【5】起きたら太陽の光を浴びて、軽いストレッチをする。

 

【昼寝時間の目安】20代前半までは10分まで。20代は15分まで。30〜40代は15〜20分。50〜60代は30分まで。70代以降は30分〜1時間ほど。

 

「深く寝てしまうと覚醒しにくくなり、かえって眠気が強くなります。深い睡眠に入るまでの時間は、年齢によって変わります。年を重ねるほど深い睡眠ができにくくなります。夜の睡眠の妨げにならないよう、昼寝時間の目安を参考に」

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