必死で働いた現役期間を終えた老後、年金生活に入るや、思いもかけない形で老後破産の瀬戸際を生きるーー。そうした事例を『NHKスペシャル 老人漂流社会“老後破産”の現実』(9月28日放送)ではリアルに取り上げ、「早く死にたいーー」という独居高齢者の悲痛な叫びが、多くの視聴者に危機感を与えた。

 

「親や祖父母を長期間にわたり介護することは、人生に多大な影響を与えます。時には破産も。これは社会問題化するのではないでしょうかーー」

 

そう話すのは、介護ジャーナリストでAll About「介護福祉士」ガイドの小山朝子さん。20代から9年8カ月、洋画家の祖母を介護した経験をもとに、当事者の視点から講演、執筆、コメントを行っている。介護から陥る貧困問題について聞いたところ、もっとも気を付けたいこととして、介護離職と介護うつの問題をあげる。

 

「親の介護で離職する人は少なくありません。仕事を失い、収入の道が途絶えてしまうので、自分の生活がままならなくなり、社会との接点がなくなることなどから介護者のうつ病も目立っています」

 

小山さん自身、2年間完全に仕事を休み介護に専念した。その経験から、こうアドバイスする。

 

「仕事を休んでいる間、何をするかも肝心です。ただ介護だけに集中するのではなく、今後何ができるか模索できる期間でもあります。たとえば私は介護の経験から介護ジャーナリストになりました。議員になった人もいます。介護の経験を生かし、再出発をはかることもできるのです」

 

一方、親の介護に専念するために長年勤めた会社を辞めた独身男性が、親を看取った後で再就職できず、ホームレスになったというケースも。こんなケースを防ぐために企業の取り組みとして、国が定める介護休業法の日数の拡大や携帯情報通信機器を利用したモバイルワークなど、柔軟な働き方の推進が、大手企業を中心に始まっている。小山さんは次のように続ける。

 

「働きざかりの離職を防ぐため、企業も対策を講じる必要性を感じ始めています。介護を担う家族の金銭的・精神的負担をどうするかが、今後の重要課題でしょう」

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