「生前、本人を目の前にして相続の話をするのは不謹慎だと思い、触れない人が多いのですが……。“老後破綻”に陥らないためにも、夫婦で相談しておくことはとても大事です」

 

そう語るのは、『ダンナの遺産を子どもに相続させないで』(廣済堂出版)の著者で、ファイナンシャルプランナーの高橋成壽さん。高橋さんは、「ゆとりある(老後の)生活を送るために生活費がいくらかかるのか把握して、早めに対策を立てるべき」と、アドバイスする。

 

「’13年の厚労省の統計によると、平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳、男女平均84歳は世界一です。さらに、日本人は女性の2人に1人、男性の4.5人に1人が90歳まで生きるという統計もあります。長生きは喜ばしいことですが、老後の生活統計を立てておかないと破綻しますよ」

 

90歳まで生きるとなると、さすがに不安……。そこで高橋さんが、寡婦破綻を防ぐために「夫が死ぬ前に主婦がやっておくこと」を教えてくれた。

 

【1】夫の死後にもらえる年金額を調べる

まず、日本年金機構から毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」をチェック!「ねんきん定期便」では、もらえる年金の額と、加入期間がわかる。夫の年金額は夫が受け取る「ねんきん定期便」で確認を。

 

【2】夫名義の預金通帳や自分のへそくりを把握

夫が死亡すると夫名義の資産に相続税がかかるので、まずは、定期預金、株や投資信託などの夫名義のすべての金融商品を含めて、すべて一カ所にまとめておこう。ここで注意したいのが、専業主婦のへそくり。へそくりは、金額の大小に限らず、妻の財産とは認められないことがあるので気をつけよう。多額のへそくりがある専業主婦は、事前に専門家に相談を。

 

【3】保険証書を探す

夫が加入している保険証券(証書)も貯金通帳と一緒に保管しておきたい。証書にある契約者、保障の対象となっている被保険者、保険金額、受取人が誰になっているのか、もう一度確認しよう。

特に、夫がかけている生命保険の死亡保険金は、夫が死んだ後、年金の不足分を補う大切なお金となる。

 

【4】住宅ローンの残債をチェック

退職金で完済するのが望ましいが、無理に返済すると老後資金がなくなってしまうことも。返済期間を延ばして1カ月の負担を少なくする「繰下げ返済」も視野に入れて専門家に相談しよう。ただし夫が死亡すれば、団体信用生命保険に加入している夫名義のローンの残りを支払う必要はなくなる。

 

【5】妻の口座にお金を移動

へそくりを妻の財産として認めてもらう方法に、年間110万円までの贈与には税金がかからない制度『暦年贈与』がある。夫が元気なうちに「夫の口座から妻の口座に直接金額を振り込む」などの対策を。

 

【6】55歳ごろまでに家を買っておく

賃貸住宅で生活している人は、55歳までに持ち家を手に入れておきたい。退職してからだと住宅ローンの審査が通らないことがあるので、お早めに。

 

【7】生活費をカットする

定年後、意外にかかるのが趣味や旅行のお金。それが老後の蓄えをむしばむのであれば、趣味を控えることも考えなければならない。「やりたいことに優先順位をつけて、順位の低いことはやめると、かなり節約できます」と高橋さんは言う。夫が現役のうちに老後の生活を視野に入れ、支出にメリハリをつけておけば節約ストレスもたまらない。

 

「長生きしなくていい」と言ったところで、女性の半分は90歳まで生きる。今から準備して、楽しい寡婦生活を!

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