’13年4月から始まった孫への教育資金贈与。祖父母が贈与したい孫の専用口座を金融機関に作り、そこに1,500万円までの金額を入金。孫が30歳になるまで教育機関で必要とする資金をその口座から自由に非課税で引き出せる、というものだ。
「おととしの施行後、孫かわいさに口座を作る祖父母が殺到。私もかなりの数の相談にのっています」と、情報提供サイト『オールアバウト』で相続・相続税ガイドを担当するファイナンシャルプランナーの小野修さん。
あまりの反響の大きさに、政府は今年12月末で終了する予定を’19年3月まで延長したほど。しかし、その現場では思わぬトラブルが続発していた。
●「自分ばかり孫にいい顔するな」と両祖父が大ゲンカ!
生まれたばかりの長女の娘に1,500万円満額贈与した文彦じい(63)。その直後に長女の婿の父から怒りの電話がかかってきた。「なんで勝手に満額贈与するんだ。こっちだってしたかったのに」。その日、相手方の祖父も孫に贈与しようとしたところ「枠はもういっぱいです」と断られたのだ。
「この制度は孫1人の枠が1,500万円と決まっているので、片方の祖父が枠を使ってしまうと、もう片方の祖父はしたくてもできないんです」(小野さん)
しかもいったん設定した口座は解約や返金がいっさいできないため、後で「では折半で」という変更も不可能。結局、相手の祖父の怒りは収まらず、その後いっさいの親戚づきあいがなくなってしまったという。
●内緒で1人の孫に贈与したことがバレ、孫贈与貧乏に!
長男に2人、長女に1人の孫がいる武雄じい(75)。長女に「お願い」と教育資金贈与を頼まれ1,000万円を贈与。長男には内緒にしていたが、武雄じいの妻が長男に言ってしまい「うちの子供にも公平にしてくれ」とねじこまれた。武雄じいは1,000万円を孫3人で分ければいいと考えたが、変更不可能の鉄則が立ちはだかる。しかたなく長男の子供2人にも1,000万円ずつ贈与し、老後に備えていた貯金がゼロに……。
「これが税理士の間で『あげすぎ貧乏』といわれるケース。本人は孫に『ありがとう』と言われるのがうれしくてつい気張ってしまうのですが、気がついたら、自分たちの生活が立ち行かなくなってしまった人を何人も見ています」(小野さん)
●エルメスの真っ赤なバッグを買って愛人騒動に!
女子大生の孫から200万円近い高級ブランドバッグをせがまれた敏之じい(78)。やはり贈与税対策に、自分で地元のセレクトショップに買いに行った。ところが地方都市だけに店の関係者から「真っ赤なバッグなんて、敏之じいさんに愛人ができた」と噂が拡散。「孫に200万円のエルメスなんか買うか」と誰も信じてくれず、赤っ恥をかいた。
●入学祝いにあげたマンションは遊び仲間の巣窟に!
北海道在住の秀夫じい(75)は、孫が東京の大学に合格した祝いにと六本木に2DKマンションを購入。「これでわしが上京したときは孫の部屋で過ごせる」とご機嫌だったが、孫が喜んだのは入居のときだけ。部屋は友達グループの溜まり場になってしまい、じいが上京しても「ホテルに泊まってよ」。まさにじいの心、孫知らず。
ウチにはあげる資産もないと思っているあなた。少ない資産でも「あげすぎ貧乏」になる可能性は十分あります。気をつけて。