「高齢になった親の将来は、家族にとって深刻な問題です。どれほどのおカネがかかるのか、事前に知っておくことが重要です」
こう語るのは、ファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さん。離れて暮らす親を自ら介護し、父親をみとった後、母親は今も地元で一人暮らしを続けている。その黒田さんに「親にかかる費用」を教えてもらった。
〈Q.1〉話題の「緊急通報システム」「見守りサービス」にかかる費用は?
「緊急通報システム」とは「何かあった際、通信機の緊急ボタンを押すと、契約スタッフが救援に向かいます。そして必要に応じ、家族への連絡や救急車の要請をしてくれます。自治体で値段は違いますが、月に数百円から利用できるところもあります」(黒田さん・以下同)
「見守りサービス」の代表は、東京ガスや大阪ガスが行っている、ガスの使用状況から高齢者の様子を確認するサービス。「料金は、月に3千〜5千円ほど。各区市町村の地域包括支援センターに、詳しく紹介したパンフレットが置いてあります」
〈Q.2〉大病院で受診する際にかかる費用は?
「ベッド数200床以上の病院の45%が、別の病院からの紹介状がない場合、『選定療養費』というものを取っています。平均額は2千130円。かかりつけ医からの紹介状があれば、かかりません」
〈Q.3〉急な入院となったとき、退院までにかかる費用は?
脳卒中などで倒れ、入院。リハビリも必要で、治療は長引きそう。そんなときにはいくらかかる?
「こういった場合はまず『急性期病院』と呼ばれる高度治療病院に運ばれます。1カ月ほどで退院したとして、費用は30〜60万円。このあと、転院して治療を受けることになりますが、通常ここも3〜5カ月で再転院。それまでに月額18〜25万円がかかります」
脳疾患などでは、要介護状態につながることも多い。次の転院先が見つからない場合、家族は在宅介護か、施設に入所させるかの判断を迫られる。
「倒れてから介護が始まるまでの半年間で、トータル150〜200万円かかるケースも。高額医療制度の利用は必須でしょうね」
〈Q.4〉認知症になった際に、かかる費用は?
「公益財団法人家計経済研究所の調査では、要介護が1でも、認知症が重度だと、1カ月にかかる介護費用は5万7千円。要介護度が4〜5で認知症が重度の場合は、月にかかる費用は12万6千円にアップします。早期対応が、介護費用を抑えることにつながります」
〈Q.5〉親が在宅での介護を受ける生活になったら、介護費用はいくらかかる?
「’11年の調査では、介護保険の介護サービス利用料(訪問介護や通所介護)にかかるのが月に3万7千円、介護サービス以外の費用(医療費やおむつ代など)にかかるのが月に3万2千円、計6万9千円でした(公益財団法人家計経済研究所の調査)。ただし、介護保険の給付や自治体の助成などがあるので、実際に負担するのは計5万6千円です」
これを、介護の期間と掛け合わせてみると……。
「私は、『介護の準備費用は300万円を目処にしてください』と、いつもお伝えしています。ここにQ.3の急な入院にかかる費用も加えると、450〜500万円必要となりますね」
「子供世代より親世代の方が貯蓄額が多いんです」と語る黒田さんは、すべてを負担するわけではなく、親自身が持つおカネを介護費用に回してもらっては、とアドバイスをくれた。