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第二次世界大戦の終結から70年という、大きな節目を迎えた’15年。そこで、本誌は戦後70年に見たい作品を、著名人に薦めていただきました。

 

「安保法制が衆議院を通過し、安倍政権は既成事実をどんどん積み上げています。歯止めをかけなければ過去の歴史の繰り返しです。作家の澤地久枝さんや若い学生たちが、国会前で冷静に判断しながら声を上げている行動は、素晴らしいと思います」

 

福島第一原発事故以前から「反原発」をテーマにし、不安におびえる市民のみならず、原発推進派の主張も取材してきた映画監督の鎌仲ひとみさん(57)は、先日の安保法案の強行採決にも怒りを胸に秘め、「冷静な分析を」と訴える。「国民が感情だけに走らないためにも」と前提したうえで、今回の作品をチョイスしたポイントのひとつに「加害者の視点が描かれていること」を挙げて解説する。

 

「おおむねドキュメンタリー作品は、被害者の側から描かれています。ところが『日本鬼子(リーベンクイズ)』は、日本兵が日中戦争において『どのように中国人を殺したのか』『どうやってレイプしたのか』あるいは『妊娠女性と子どもを私は殺した』などの話を、非常に克明に語っています。最後に原爆を落とされた私たち日本人は、太平洋戦争ではどこまでも『被害者だった』と思い込む節があります。でもその前に、アジアでどれだけのことをしたかに言及している作品は非常に少ない。日本人として見るのがつらいですが、そこを客観的に見つめることが大事だと思います」

 

次に挙げるのが、日本人の民族性に踏み込んだ傑作『人間の條件』。

 

「この作品で立体的に描かれているのは、人間の肉体や精神が戦争で破壊され、抵抗を奪われていくプロセスです。また日本人特有の『一度決まったら、従うしかない』とか『お互い足を引っ張り合う』という体質も描かれ、まさに現代への警告のようです」

 

自身の作品『ヒバクシャ 世界の終わりに』では、「核兵器や劣化ウラン弾などの使用で予想される、双方向の戦争被害に視点を置いた」と話す。同作では、湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾の影響で、戦争から数年を経たあとに白血病を発症した、イラクの子供たちの姿が収められている。なかには、撮影中に短い命を終えてしまう子も……。

 

「原爆も劣化ウラン弾も開発したのはアメリカでしたが、それを支持したアメリカ人の中にも、母国に住みながら核開発の過程で被爆した方が大勢います。これから戦争が起きれば災禍の広がりが世界的規模になる。日本には、集団的自衛権などの『軍拡』ではなく、『軍縮』で各国と手をつなぐ道しかないことが、明らかなはずなんですが……」