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(C)浦上満氏蔵

「春画こそ『クールジャパン』です。葛飾北斎や喜多川歌麿など世界に名だたる絵師たちが、最高の画材を使って最高の技術で描いているのですから。大名や裕福な町人がスポンサーになることもあり、絵師たちはいい絵の具や紙を使えました。また春画には男女の絡みだけではなく物語が描かれているものも多い。楽しむためにはある程度の教養も必要でした。春画を知らずして浮世絵、ひいては江戸文化を語ることは不可能でしょう」

 

そう穏やかに語るのは、元・内閣総理大臣で現・永青文庫(えいせいぶんこ)理事長、細川家26代目当主の細川護煕氏(77)。9月19日から、永青文庫(東京都文京区)で『春画展』が開かれる。

 

実はこの春画展、性的表現が問題視されて開催場所がなかなか決まらなかった。そこで、護煕氏が細川家屋敷跡の一部にある美術館、永青文庫を「義侠心から」会場として提供した。

 

「’00年代から春画展はフィンランドやスペインなど、海外のあちこちで行われています。’13年には大英博物館で開催され、9万人近くが来場しました。海外では高く評価されているのに、日本では、春画は展覧会の一部に間仕切りをして、わずかな数を展示する程度。印刷物では無修整のものが出回っているのに、本物の展示はダメだというのはやっぱりおかしいでしょう」

 

細川家にも2点の春画があり、本展で初公開する。

 

「以前はうちにも、もっと多くの作品があったのだろうと思います。これは私の想像ですが、学者のように堅物だった私の父が、こんなものはけしからんと処分してしまったのではないかと(笑)。祖父は豪胆な人物だったので、捨ててはいないと思いますがね」

 

おびただしい美術品が掲載された細川家の収蔵品目録にも入っていないので、細川氏も最近まで春画があることを知らなかったという。

 

「あちこちの元・大名家でも隠し持っておられるようで、先日もある方から『実は私のところにもあるんです』と打ち明けられました。今回を機に、安心して外にお出しいただけるようになったらいいですね(笑)」

 

いわゆる“交わり”の部分が注目を集める春画だが、見どころはほかにもある。

 

「そこに描かれる着物や手鏡などの生活文化がおもしろいですよ。猫がのぞいていたり、小物や着物で身分がわかったりね。『書き入れ』で語られる物語も、まさに『笑い絵』と言われるように、思わず笑ってしまうものが多い。見れば見るほど発見が多い芸術です」

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