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’16年に40周年を迎える東京・表参道の「クレヨンハウス」。約5万冊の児童書をはじめ、木製玩具やオーガニックコスメなどが置かれ、地下のレストランと野菜市場ではオーガニックの食を楽しめる。まさに、都会の憩いの場だ。「クレヨンハウス」を主宰するのは、作家の落合恵子さん。執筆や講演とショップ経営を通じ、家族や社会の変化を見つめてきた。

 

「お店を開くきっかけは四十数年前、イギリスやアメリカを訪れたときに子どもの本の専門店に出合ったこと。子どもが1冊の本に出合い、それを中心にして、ほかの子や大人と出会うスペースとして使われていました。また、そこでは環境問題や教育の在り方、市政についてもみんなが自由に話し合っていました。開放感あふれる空気に『こんな受発信のスペースが(日本にも)ほしい!』と思いました」(落合さん・以下同)

 

『およげ!たいやきくん』が大ヒット、ピンク・レディーが旋風を巻き起こした’76年、落合さんは念願のお店を開いたのだ。

 

「12月5日のオープン日は結局、朝7時ごろまでスタッフと準備に追われていました。4日の夜遅くに『明かりがついていたから』と、イラストレーターの和田誠さんが立ち寄られ、その場でお茶のメニューすべてにイラストを描いてくださいました。ところが『和田誠さんイラスト入りメニュー』は、あっという間に消えてしまいました。ファンが“お持ち帰り”してしまったからです。一部だけでも隠しておけばよかった(笑)」

 

開店10年後に、現在の場所に移転。ベビーカーも通りやすい広めの通路、子どもの目線に合わせた低めの本棚、気になった本を手軽に読めるテーブルと椅子が用意され、赤ちゃんから大人までゆったりと過ごせるよう配慮している。

 

「小さいころ立ち読みしていると、ハタキをかけられて追い立てられて。『大人になったら、ハタキをかけない本屋さんをやろう』と思っていました。気軽に座り読みできるようにしたのは、その経験があったからかもしれません」

 

絵本との出合いを広げたいと、さまざまなイベントや展示も続けている。多くの絵本作家はもとより、映画監督の山田洋次さん、作家の大江健三郎さん、作詞家のなかにし礼さんら、さまざまなジャンルを代表する人物が来館し、交流してきた。

 

そんな、日ざしが明るいテラス、3階建ての広い店内には、男性の姿も多い。

 

「オープン当初は『お父さんもときどきは、お子さんといっしょに1冊の絵本をゆったりと開いてください』と呼びかけたこともありました。現在は、年代物の座り読み用テーブルで『パパが君と同じ年のころ、ここでこの本を読んだよ」なんておっしゃっている親子もよく見かけます。野菜市場では、1個売りの卵やセロリなどをていねいに選びながら、『ほうれんそうも要る?』と電話している男性も。男性の意識はずいぶん変わったと思います」