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「私は日本(長崎県佐世保市)で生まれて日本で育ったから、日本人だと思ってる。でも、100%ではないし、はっきり日本人とも答えたくない。だって、そう答えたら、父やその家族、祖先に申し訳ない気もするから。だから、昔もいまもこう答えています。私は日本とアメリカのハーフですって」

 

こう語るのは、昨年のミス・ユニバース日本代表であり、世界大会6位の美女・宮本エリアナ(22)。アフリカ系アメリカ人の父と、日本人の母の間に生まれたエリアナは、ミス・ユニバース初のハーフの日本代表としても話題になった。

 

実は2年前にも一度、ミス・ユニバース長崎県大会への出場を打診されていたが、断っていた。

 

「そのころの私は、ミスコンに全く興味を持てなくて」(エリアナ・以下同)

 

ところが、その年の春、気持ちが変わる事件が起きる。

 

「1歳上のステファンは、白人系アメリカ人と日本人のハーフでした。ハーフ仲間の間では、自分がいかに生きにくかったか、どんないじめを受けたかを笑い話にするのが定番でしたが、あるとき彼が真顔で『日本ってさ、居心地悪いよね』と言ったんです。『自分の居場所がわからない』ってこぼしていて……」

 

彼が自ら命を断ったのは、その数日後のことだった。

 

「お酒に酔って首をつったと聞きました。ショックでした」

 

葬儀の後、SNSを通じて、ステファンが生前、さまざまな偏見に苦しむ人たちを支え、居心地のいい社会になるように訴える活動をしていたことを知る。翌年、あらためてミス・ユニバースの打診があったとき、エリアナは出場を決意した。

 

「偏見に悩んで死にたいって思っているコに、私も何かできないかって考えたんです」

 

長崎県大会を経て、’15年3月、日本代表に選出された彼女を待っていたのは、海外メディアの取材ラッシュだった。しかし、国内では、ネットを中心に「ハーフの日本代表ってあり?」という偏見丸出しの発言が散見されるようになる。

 

ある取材で、100年後の日本について聞かれ、「もっといろんな国の方が増えると思います。その結果、いろんな差別や偏見がなくなったらいいなと思っています」と、答えたコメントは、「純日本人は少なくなる。いい意味で革命を起こしたい」と、ねじ曲げられ、センセーショナルに伝えられた。

 

結果、彼女は「反日」という思いもよらないレッテルを貼られ、ネトウヨ(ネット右翼)たちに非難され、揚げ足を取られた。だが、彼女は動じない。

 

「慣れちゃいました(笑)。悲しくないわけじゃないけど、想定内。これが人種差別や偏見に対する問題提起のチャンスになればいいと思います」

 

昨年12月、ラスベガスで開催された世界大会を経験したエリアナは、さらに大きく成長したようだ。

 

「私は私、ありのままでいい。日本代表だからこうしなきゃ、日本人だから、こうでなきゃって、考えなくなりました」

 

他国の代表たちはもっと自由に、素直に、自分自身を表現して、輝いていた。

 

「それまで私自身がハーフの自分という立場にとらわれすぎていた気がしたんですね。ハーフを言い訳にしていたところもあったかもしれません。でも、世界大会に出てみたら、出場者の8〜9割は、ハーフだったんですよ」

 

優勝してミス・ユニバースに選ばれたフィリピン代表のピアさんは、ブラジルとフィリピンのハーフだった。

 

「でも、彼女はハーフであることに全く、負い目も引け目も感じていませんでした」

 

大会中に仲よくなり、トップ5に入ったミス・フランスのフローラさんはアフリカ系だ。

 

「彼女も私同様、初めてのアフリカ系ハーフの代表ということで、母国ではとても注目されたって苦笑してました」

 

彼女たちとの出会いがエリアナの新たな力になっていた。

 

「民族や国籍にとらわれる必要は全くないと学びましたし、私自身の視野も、とっても狭かったんだと実感しました。ひとたび世界に出てしまえば、ハーフなんて珍しくもなんともなかったんです」

 

エリアナは、先日、会社を立ち上げた。起業は幼いころからの夢だったという。

 

「主な業務内容は、トータル・ビューティー。ミス・ユニバースで経験し、学んだウオーキングやスピーチ、マナーも含めたトータルの美をプロデュースしていきたいです」

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