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地域おこし協力隊という制度をご存じだろうか?平成21年度に総務省の肝いりでスタートしたこの制度は、人口減少や高齢化が著しい地方に地域外の人材を積極的に受け入れるというもの。都市住民に地方で地域協力活動を行ってもらうことで定住・定着を促進。意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図ることを目的としている。

 

つまり地方創生策の一環として、地方自治体を活性化させるためにスタートした事業だったのだが、その実態が報道されることは数少ない。そんななか地方自治体関係者のひとりがこう語る。

 

「本来、地域おこし協力隊の目的は都市部から地方に移住者を増やすためのものですが、実際には約半数近くが移住していないのが現状です」

 

総務省は隊員の対象として1「地方自治体から、委嘱状等の交付による委嘱を受け、地域協力活動に従事する者であること」、2「1の委嘱に当たり、地方自治体が、その対象者及び従事する地域協力活動の内容等を広報誌、ホームページ等で公表していること」、3「地域協力活動を行う期間は、おおむね1年以上3年以下であること」、4「生活の拠点を3大都市圏をはじめとする都市地域等から過疎、山村、離島、半島等の地域に移し、住民票を移動させた者であること。したがって、同一市町村内において移動した者及び委嘱を受ける前に既に当該地域に定住・定着している者(既に住民票の移動が行われている者等)については、原則として含まないものであること」としている。

 

だが、実際には定住していないケースが多いのだという。これだけでも驚きだが、地域おこし協力隊にまつわる驚愕の事実はほかにもあった。

 

「この事業のために、総務省は約1.6億円の財源を確保しています。一人の隊員あたり月収約15万が支給され、住居まで提供されています。総務省からは一人当たり約400万円の予算が組まれていることになんです。15年度で約2600人の隊員が活動しており、ざっと計算すると約100億円のも税金が使われていることになります」(前出・地方自治体関係者)

 

活動内容は観光業から農業、林業まで様々なジャンルに分かれており、隊員数は増加傾向にという。その背景にあるのは“ぬるすぎる”活動内容にあるようだ。関係者が疑問を呈する。

 

「もちろん、その地域のために精力的に活動して貢献している方もいらっしゃいますが、中には、言い方は悪いですが、給料泥棒と化している人物もいることも確かです。地域おこし協力隊の職業の中には、わざわざ会社に行かなくてもレポートのみ提出すればいいという“ゆるい職業”もありますからね」(前出・地方自治体関係者)

 

地域おこし協力隊の任期は最長3年で、その後は自主的に仕事を探さなければいけない。しかし、ここで隊員たちは、現実の厳しさを突きつけられることになる。

 

「月収15万円をもらって、協力隊以上にゆるい職業なんてそうそうありません。地方ですので、15万円だけでも十分な収入ですし、そのうえ住居も提供される。地方の民間ではここまで補償されている仕事はないでしょう。本来であれば3年後、自立して就職しなければいけませんが、みんな、就職の厳しさを知り、任期が終われば定住せずに、というかできずに、自治体を後にする人も多いです」(前出・地方自治体関係者)

 

そのため、まるで“ノマド”のように3年ごとに地方を転々とすることで、この制度のうまみだけを享受する人も多いそうだ。

 

「中には社会経験が豊富な方もおり、自分の経験を地域に活かし、活性化に役立てている人もいますが、私が知る限り、大学卒業したての右も左もわからない人が多いような気がします。先日会った子は、鹿肉でビーフジャーキーを売り出すとか言って息巻いていましたが、鹿肉のビーフジャーキーなんて世の中にありふれている。そんなことさえも把握できていない人が活性化のノウハウなんて持っているわけがない。それを見越せない自治体の職員の問題でもあると思いますが、これじゃ活性化するものもできませんよ」(前出・地方自治体関係者)

 

スタートして既に7年が経過したが、地方が活性化しているかどうか。今の日本の現状を見れば、自ずと結果はわかるだろう。

 

 

(フリージャーナリスト/松庭直)

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