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『日本一「幸せな街」は? 写真:青木紘二/アフロ』

 

身体をつくり上げる基本は、食べること。つまり、良い食生活ができる街かどうかは重要です。食材にこだわった高級店だけでなく、美味しくて安い庶民的な店もある、という多様性が街にはあるべきでしょう。

 

そんななか世界的な潮流として注目されているのが、地元産のオーガニック(有機)な食材を使ったローカルフードです。逆にマクドナルドのようなファストフードは完全に劣勢のようです。今、先進国の都市生活者の食に対する意識は、大きく変わってきています。

 

アメリカでは、ニューヨークのブルックリンやオレゴン州・ポートランドがこの流れを牽引しています。オーガニックやローカルを謳ったレストランに人気が集中していて、なんとマンハッタンのビルの屋上で作られているハチミツもあるくらいです。

 

では、日本ではどうでしょう。食文化が豊かな街を判断する指標として

 

・庶民的な店でうまい料理やお酒を楽しんだ

・地元でとれる食材を使った料理を食べた

・地酒、地ビールなど地元で作られる酒を飲んだ

・ミシュランや食べログの評価の高いレストランで食事した

 

の4つで、国内134の都市を調査してみました。その結果は――?

 

1 金沢市

2 那覇市

3 山形市

4 盛岡市

5 青森市

6 静岡市

7 武蔵野市

8 松江市

9 高知市

10 長野市

 

1位は「金沢市」。2位「那覇市」3位「山形市」が続きます。吉祥寺を擁する7位「武蔵野市」以外は、すべて首都圏・近畿圏以外の地方都市がトップ10を占めています。

 

「金沢市」は、金沢市を評価した人が選んだ個別の選択肢では「地元でとれる食材を使った料理を食べた」「地酒、地ビールなど地元で作られる酒を飲んだ」が1位。トップ10に入った地方都市も、概ねこの2項目のスコアが高く、ランキングを押し上げています。

 

一方、首都圏・近畿圏で上位に食い込んだ都市は、たとえば11位「大阪市北区」や12位「目黒区」13位「港区」のように、「ミシュランや食べログの評価の高いレストランで食事した」のスコアが高いことに加え、「武蔵野市」のように、「庶民的な店でうまい料理やお酒を楽しんだ」のスコアが地方都市よりも高いのが特徴となっています。

 

レストランや居酒屋等の飲食店の多様性がある、つまり客層・価格帯・ジャンルのレンジが広く、数が多いことが反映されているのでしょう。

 

欧米では、どこの都市に行っても地元産のクラフトビールを飲めますし、地ワインもよく見受けられます。

 

地産地消型の食生活は、健康的で、環境負荷が小さいだけでなく、ローカル経済を支え、地元への誇りと愛着を育てます。美味しいローカルフードがあるかどうかは、都市を評価する大きなポイントに間違いありません。

 

都市の魅力という点において、食はまた、観光の切り札にもなります。

 

スペインのバスク地方のサン・セバスチャン市は、地元の食材を使ったピンチョスがうまい庶民的なバルが軒を連ねていると同時に、世界最先端の料理を提供するミシュランの星つきレストランがいくつもあり、人口わずか18万人の地方都市ながら、世界一の美食都市と言われ、世界中から観光客を集めています。

 

日本の地方都市も、そうした方向を目指すことで新しい活力を生むかもしれません。

 

なお、上記の調査結果は『本当に住んで幸せな街』(光文社新書)より引用しています。

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