仕事で残業してから、遅くまでやっている映画観や美術館、あるいは英会話スクールに通ったり、はたまた同僚と飲みにいったりして、活動している時間が長くなる。また、自分だけではなく、子どもも塾や習い事、アルバイトで遅い時間に帰ってくるようになっている……。やりたいことや、やるべきことが増えていることによって、なんだか昔より夜に起きている時間が長くなった、そうした体感はないだろうか?
『「夜遊び」の経済学』(木曽崇著、光文社新書)によると、夜23時45分から翌朝7時00分までの深夜帯に起床している人間は平成18年の調査結果よりも平成23年のほうが約122万人多いとのこと。すなわちこの5年の間に夜23時45分翌朝7時00分までの深夜帯に眠ることなく何らかの活動を行っている国民が、約122万人も増えているということ。逆にこの122万人は、日の昇っているいずれかの時間帯に睡眠しているということになる。
このように私たち日本人の生活が昼から夜にシフトしていくなか、そこに生まれた新しい活動時間を有効活用していこうという「ナイトタイムエコノミー」振興が注目を集めている。「ナイトタイムエコノミー」とは、日が落ちてから翌朝までに行われる経済活動の総称。イギリスやシンガポールなど国を挙げてこの「ナイトタイムエコノミー」を振興すべしという機運が盛り上がっている。
たとえばイギリス・ロンドンでは、夜でも楽しく安全に歩ける街を認定する制度「パープルフラッグ」を制定。普段その地域に親しみのない観光客でも抵抗なく訪れることのできるように工夫したり、24時間化された地下鉄(通称「ナイトチューブ」)によって市域の深夜交通の利便性を大幅に向上させたりするなどして、都市を挙げての「ナイトタイムエコノミー」振興が行われている。イギリス国内のバー、ラウンジ、劇場、レストランなどのナイトタイムエコノミーに属する産業を中心とした商業者によって構成される「ナイトタイム産業協会」によると、イギリス国内のナイトタイムエコノミーの経済規模が年間およそ9兆5700億円(660億ポンド)にも達するという驚きの数字も試算されている。
国内に目をむけてみても、ナイトタイムエコノミー振興はますます注目を集めている。たとえば議員有志によって「夜遊び」を振興し、経済の活性化につなげることを目的とした議連「時間市場創出(ナイトタイムエコノミー)推進議員連盟」も設立されているのだ。新しいビジネスチャンスがそこにある?