「最近、大手保険会社がターゲットにしていないようなニッチな分野で、『こんな保険が欲しい』という需要に応えた『少額短期保険』と呼ばれる保険が増えてきました。たとえば、ジャパン少額短期保険の『痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険』は、痴漢の被害を受けた際、あるいは、加害者だと疑われた際に、無料で弁護士に電話相談ができます。月々の保険料は590円で、事件直後の電話相談、交通費などの接見費用を含め、事件発生から48時間以内にかかった弁護士費用は、全額保険で補償してくれます」
こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今年3月以降、痴漢を疑われた男性が線路に降りて逃走する事件が相次ぎ、その後、『痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険』には、申し込みが殺到したという。
「また、アイアル少額短期保険がSOMPOホールディングスと共同で開発した『明日へのちから』は、介護度改善を目指すための保険です。対象は、介護認定を受けた要支援1〜要介護5までの方。1年間の保険期間中に、介護度が改善されると、祝い金が受け取れます。年間保険料が5,000円なら祝い金は2万5,000円と、どのプランでも、保険料の5倍の祝い金が用意されています。祝い金獲得が、リハビリに励む動機づけになればいいですね。今は、SOMPOホールディングスグループの介護施設利用者しか加入できませんが、今後はほかの介護施設利用者にも広げていくようです」(荻原さん・以下同)
注目が集まっている『少額短期保険』。その理由を荻原さんが解説してくれた。
「少額短期保険は、見込める収益が少ないため、大手の保険会社による開発がなかなか進みません。そこに活躍のチャンスを見いだしたのが、『少額短期保険会社』です。少額短期保険会社は、’06年に施行された『改正保険業法』によって誕生しました。扱えるのは、保険金額1000万円以下、保険期間も最長で2年で、掛け捨て保険のみです。実は、法改正以前は、無認可で保険商品を扱う悪質な業者もありました。そこで、資本金が10億円以上必要な一般の保険会社とは別に、資本金は1,000万円以上の少額短期保険会社の基準を設け、登録制にして、悪質業者の一掃を図ったのです」
法改正から10年以上たって、悪質な業者は減り、今年3月末の少額短期保険の契約件数は、前年より50万件増えて687万件に。保険料収入も89億円増えて815億円と、順調に推移している(日本少額短期保険協会調べ)。
そんな、契約件数を順調に伸ばしている少額短期保険だが、注意点が1つあると荻原さんは言う。
「少額短期保険には魅力的な商品もありますが、注意点が1つ。一般の保険とは違って、『保険契約者保護制度』の対象外なのです。万が一、保険会社が破たんすると、十分な補償が受けられないケースもあります。注意してください。なお、保険商品が増えてくると、玉石混交になりがちです。きちんと調べたうえで選ぶようにしましょう」