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「職場では動揺が広がっています。私も就職のときは手厚い福利厚生を考えて選びましたから、今回の『住宅手当』の廃止は正直ショックです。たしかに正社員と非正規社員の格差があることはわかっていました。でも、まさか正社員の福利厚生が減らされることになるとは……」

 

呆然とした様子でそう語るのは日本郵政グループの会社に勤める30代の一般職の男性社員だ。

 

日本郵便やゆうちょ銀行、かんぽ生命などを傘下に持つ日本郵政グループ(以下、日本郵政)は、福利厚生制度として正社員に支給している「住宅手当」を10月から一部廃止することを決定した--。

 

これまで日本郵政の社員がアパートやマンションなどの賃貸住宅に住んでいた場合、「住宅手当」として月に最大2万7,000円が支給されていた。しかし「住宅手当」が段階的に撤廃されることで、将来的に、年間約32万円もの手当が消えることに!

 

さらに正社員だけに支給されてきた「寒冷地手当」や「遠隔地手当」なども削減される。一方的に“手当”の廃止を言い渡された前出の男性社員の怒りはおさまらない。

 

「そもそも日本郵政は、オーストラリアの物流会社の買収に失敗して4,000億円の損失を出しています。経営陣の過失を社員に押しつけたように思えてなりません。とくに『住宅手当』の廃止は一般職が対象。正社員のなかでも、総合職よりも立場の弱い一般職に負担を押しつけたとしか思えない。長年にわたって手当をもらってきた会社の上層部から言われても、到底納得できません」

 

日本郵政の方針変更について、全国紙の経済部記者は次のように分析する。

 

「今年1月に『非正規という言葉を、この国から一掃していく』と演説した安倍首相が推し進める『働き方改革関連法案』は、’19年度から大企業での施行を目指しています。その前に、早々に非正規社員の待遇改善を打ち出したのは日本郵政による“忖度”のようなものです。また、日本郵政の非正規社員が待遇是正を東京地裁と大阪地裁に訴えていました。両裁判所が、住宅手当や家族手当などの処遇も含め、正社員との格差は違法との判決を下したことも背景にあります」

 

日本郵政の一部手当の廃止は一企業のことだと安心するのは早計だ。正社員と非正規社員合わせて約40万人もいる日本郵政の“決断”が、どのような形でほかの企業に波及するのか――。今後に注目したい。

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