4月3日、福島第一原発の敷地内に造った地下貯水槽から、汚染水が漏れていることが発覚した問題は、東電の危機管理のずさんさを象徴するような出来事だった。土壌汚染に詳しい、元大阪市立大学教授で、日本環境学会前会長の畑明郎氏は、今回の汚染水の漏えいについて、あきれ顔でこう話す。

 

「起きて当然だと思いました。ため池に汚染水をためているようなものですからね。貯水槽に使ったポリエチレン製の遮水シートには、つなぎ目があり、そこから漏れた可能性がある。水圧がかかることで土壌部分にでこぼこがあれば、シートに穴が開くこともある。漏れたときのことを想定し、対策を立てておくのが当たり前。あまりにもお粗末です」

 

東電によると、地下貯水槽から漏れた汚染水は120トン。今後、地下貯水槽に保管した汚染水を地上タンクに移送するまでに、最大で47トン、計167トンの汚染水が漏えいすると予測している。今回心配なのは、土壌に染み込んだと思われる、大量の汚染水による環境への影響だ。

 

「どれだけ土壌が汚染されたかは、地形や地下水の流れを調べないとはっきりとはわかりません。ただ、地形から考えると、陸地側から海側に地下水は流れるので、海洋汚染がいちばん懸念されます。すでに、福島第一原発の敷地周辺は、土壌も地下水もかなり汚染されているでしょう」

 

こう語る畑氏だが、じつは、今回漏れたと報道された汚染水よりも、もっと深刻な問題があると、指摘する。

 

「私がいちばん懸念しているのは、原子炉建屋に流れ込んだ地下水によって毎日400トンの高濃度の汚染水が大量に発生していること。この汚染水が、現在進行形で海に流出している可能性があります。汚染水は海面より高いところで発生していますから、建屋地下の土壌から海へと流れていると思います」

 

今回、地下貯水槽から漏れた汚染水は、建屋内から発生した高濃度汚染水を処理し、放射性セシウムが取り除かれた濃縮塩水(ストロンチウムなどは含まれている)。畑氏は、セシウムが含まれた高濃度汚染水が、そのまま海に流出している危険性もあるという。東電は、現在海に汚染水が流れ込まないように、780メートルに渡る遮水壁を建設中。完成は来年の7月だ。

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