11月6日、本誌記者は東京電力による『現場公開』の合同取材のため、福島第一原発に入った。報道陣に公開されたのは4号機原子炉建屋。水素爆発を起こした建屋の修復やがれき処理が終わり、核燃料の取り出し、共用プールに移す作業が11月中旬から始まる。

 

その燃料貯蔵プールは、まるで地底湖のように青く、妖しい光を放っていた。濁りのないプールの底には核燃料が整然と。神秘的にさえ感じたが、水がなければ一瞬で死亡するほどの放射性物質を放出する核燃料であることを思い返したら、身震いがした。

 

今回公開されたのは4号機のほか、6号機原子炉建屋、汚染水漏れ事故を起こした『汚染水タンクエリア』、汚染水から放射性物質を除去する『多核種除去設備』。すべて3時間の取材行程だった。

 

6号機建屋からバスに乗り込むときに不思議な光景を見た。防護服を着込んだ報道陣のバスの横を2人組の中年男性が、普通のマスクに作業着姿で歩いていた。原発敷地内でも除染活動が行われ、防護服なしでも活動できるエリアも少しずつだが増えているそうだ。

 

東京電力の説明によれば、4号機の核燃料の取り出しは、30〜40年かかるといわれる廃炉に向けた一歩だという。今回の公開取材は「その一歩は速くはないが、確実に進んでいる」ことをアピールする狙いもあったのだろう。

 

取材を終え、『Jビレッジ』似戻り、喫煙所でたむろする作業員たちの輪に交じった。高線量と緊張のなかで仕事をしてきた作業員にとって『Jビレッジ』に戻ってからの一服は格別のようだ。1日の仕事を終え、だれもが安堵の表情を見せている。

 

30歳代の男性に「作業は時間がかかりますね」と声をかけると、紫煙をくゆらせながら「あと100年はかかるんじゃねえか……」という言葉がかえってきた。現場を知っている作業員たちの声には説得力があった。

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