3月に東京で開かれた「放射能学習教材と授業実践への活用」というシンポジウム。各地の学校教師が参加して、どのような放射能教育を実施しているか発表するというものだ。そこに登場した北陸電力エネルギー科学館の職員が、こんな発言をした。

 

「私は近隣の中学や高校に出向いて放射能の授業を行っているが、授業で欠かさず言っているのは、放射能がいかに私たちの生活で利用されているかということだ。ただ怖い怖いじゃなくて、一定量であれば放射能を浴びても安全なのだから、有効利用していくことが大事」

 

その職員の授業を受けた生徒の感想文も公開されたが、「放射線は、ただ怖いものだと思っていたけど、人間は100ミリシーベルトを1度に浴びても大丈夫ということがわかりました。とても勉強になりました」と書かれていた。

 

低線量被ばくに詳しい崎山比早子医学博士は言う。

 

「1度に100ミリシーベルト以上の放射能を浴びると、線量にもよりますが精子や白血球が減ったり毛が抜けたり、いわゆる急性障害が出ます。原子力推進側といわれるICRP(国際放射線防護委員会)でさえ、放射線に安全量はないといっています。100ミリシーベルトが安全なんてでたらめを子供に教えて、この国はいったいどうなっているのでしょうか」

 

『原発と教育』(海象社)の著者で公立高校教諭の川原茂雄先生はこう指摘する。

 

「原発事故前は、『原発は安全です』という“原発安全洗脳教育”が行われていましたが、事故後は、『放射能は安全です』という“放射能安全洗脳教育”に変わっただけです」

 

川原、崎山両氏が問題視するのが、文科省作成の「放射線副読本」だ。平成23年秋、あの原発事故のあとに作られ、全国の小中学校に配布された。放射線の特性や用途、体への影響などが書かれているのだが……。

 

2人がとくに批判しているのは、「放射能はどこにでもあるということを強調することで、放射能は安全・安心です」という刷り込みをしていること。さらに、「100ミリシーベルト以下の低線量放射線を人体が受けても、がんなどの病気になったという明確な証拠はありません」として、リスクを過小評価していることだ。

 

こうした表記に対して専門家や市民団体から抗議の声が上がり、平成24年度に改訂された新副読本では「(低被ばくの人体に対する影響については)さまざまな意見があり、はっきりとした結論は出ていません」と変更された。しかし、ネット上には、改訂前の副読本がアップされたまま。むしろ放射能安全洗脳教育は、エスカレートしているように見える。崎山先生はその理由をこう語る。

 

「国をあげて『放射能は安全だ』と国民に刷り込まないと、健康被害が起きたときに訴訟を起こされますし、避難している人の帰還も進まず、賠償もかさみます。それに、原発再稼働や原発輸出を進めるためにも、放射能は安全ということにしないとマズイのです」

 

本当にこうした思惑があるなら、たかが放射能教育と見過ごすわけにはいかない。

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