「現在の警察は、振り込め詐欺のような新しい犯罪に対応しきれていませんし、防犯カメラに頼りすぎて、カメラに映っていない犯人を追うという捜査力も劣っています。“警察力”は全般的に下がっていると感じます」
こう語るのは、警察に詳しいジャーナリストの寺澤有さん。そのような状況下で、平成30年版の『警察白書』が発表された。そこには都道府県別の事件検挙率なども掲載。事件検挙率は捜査対象となっている事件の数(認知件数)のうち、検挙された件数の割合を算出している。本誌では独自に、都道府県別の警察官1人がカバーする人口を算出し、ランキング化した。
■「警察官1人でカバーする人数」ベスト10
【1位】東京都:313.60人
【2位】京都府:390.72人
【3位】大阪府:412.42人
【4位】山口県:443.51人
【5位】和歌山県:446.66人
【6位】長崎県:448.45人
【7位】高知県:450.21人
【8位】福井県:456.55人
【9位】島根県:457.15人
【9位】福岡県:461.60人
■「警察官1人でカバーする人数」ワースト10
【1位】埼玉県:638.92人
【2位】滋賀県:622.10人
【3位】宮城県:613.93人
【4位】茨城県:613.02人
【5位】長野県:606.29人
【6位】静岡県:604.19人
【7位】三重県:595.73人
【8位】岩手県:587.24人
【9位】神奈川県:584.04人
【10位】岐阜県:582.46人
※平成30年版警察白書より。小数点第3位以下は切り捨て。
ランキングは、平成30年1月1日現在の都道府県の人口を警察官定員で割った数値。警察官1人がカバーする人口を算出した。警察官1人がカバーする人口は、少ないほうがしっかり捜査できるので、警察力は高くなるだろう。1位の東京は、警察官1人がカバーするのは313人で手厚い。元刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平さんは次のように話す。
「警視庁は都民ばかりでなく皇居、国会議事堂もあり、国を守る仕事も含まれるため、警察官の人数が多いのです」(小川さん)
しかし、この数値はあくまで24時間、警察官全員が勤務した場合。
「警察官の定員は警察署長や機動隊員も含めた数です。さらに交番勤務は3交代なので、実際に交番勤務の警察官がカバーする人数は、数倍になる」(小川さん)
人員不足が浮き彫りになったのは埼玉県。警察1人当たり、東京の倍以上である638人もカバーしなければならないのだ。
「埼玉県は大都市圏で犯罪も多いし、面積も広い。人口も急激にふえています。しかし埼玉は、検挙率はワースト2位であるものの、人口1人当たりの人員が2倍いる東京と比べて事件検挙率が2%しか変わりません」(寺澤さん)
圧倒的に不利な条件のなかで健闘している埼玉県警。警察力はかなり高いと言えるだろう。大阪府警は警察官の数は多い(ベスト3)のに対し、検挙率が最下位という残念な結果に……。
「検挙率というのは、警察の通信簿のようなもの。上層部はだいぶ気にしています」(小川さん)