なければ数十万円の弁護士費用がかかることも…遺言書の活用法

「自分で遺言を作成する場合、これまではすべてが自筆である必要がありました。しかし、1月13日に施行された改正相続法では、パソコンなどで作成した財産目録や通帳のコピーなどでも、本人が署名・押印したものであれば、認められるようになりました」

 

相続問題に詳しい弁護士の外岡潤さんはそう解説する。40年ぶりに改正された相続法。’20年7月までに順次施行されていく予定だ。

 

「新制度によって、これまで対象でなかった人が新たに相続の対象になったり、遺産の分割の選択肢が増えたりします。知らないと、損をしたり、トラブルになってしまうこともあります」(外岡さん・以下「」内は同)

 

それを防ぐには改正相続法の趣旨を理解すること。そして……。

 

「高齢の親御さんが健在のうちから、円満な遺産相続の準備をしておくべき。トラブル回避には、遺言書の作成がいちばん有効です」

 

それでは、読者から寄せられた事例を基に、“あなたが損をしない”相続の仕方を考えていこう。

 

【Q1】父が末期がんであることが発覚しました。母は認知症で、父が亡くなった場合はどうすればいいのでしょうか?(62歳自営業)

 

【A1】「認知症などで判断力がなくなってしまっている場合、『後見人』を立てられます。ただし遺産分割協議をする場合、相続人同士、互いの利益が対立することになるので、娘さんはお母さんの後見人になれません。家庭裁判所に、第三者の後見人を選出してもらう必要があります」

 

認知症などで判断能力を失ってしまっている人に代わって、財産管理や契約の締結を行う『後見人』。高齢者の場合、子どもなどが後見人になることが多いが、相続時には利益相反関係になってしまうことも。その場合は、相続者以外の後見人を立てるなどの対処が必要になる。

 

家庭裁判所に、第三者の後見人を選出してもらう場合、弁護士や司法書士などの専門職の後見人が選出されることになるが、当然費用もかかる。遺産額によって異なるが、数十万円から数百万円になることも。

 

「あらかじめ遺言書で分割方法を書いておけば、遺産分割協議をする必要がなくなるので、そのために後見人を立てる必要がなくなるのです」

 

【Q2】兄夫婦には子どもが3人いて、「学費」などを名目に実家の母から約1,000万円援助してもらってきました。一方、私たち夫婦には子どもがなく、1円も援助してもらっていません。母は「あなたには遺産であげるから」と言っていますが……。(52歳主婦)

 

【A2】「相続人への生前贈与に関しては『遺産の前渡し』と見なされ、相続財産に加えて遺産分割することができます」

 

母が亡くなった場合、その遺産に、兄夫婦が援助されていた1,000万円を加えて、遺産分割を行うことができる。仮に母の遺産が2,000万円だった場合、3,000万円で計算をし、妹の相続分は1,500万円、兄の相続分がすでに受け取った1,000万円を引いた500万円となる。

 

「これを『特別受益の持戻し』といいますが、相続人のうちで『前渡し』されていない人が申し立てをしなければなりません。『前渡し』を兄夫婦が認めない場合、トラブルに発展する可能性も高い。お母さんが『遺産であげる』という意思を示しているのであれば、それを遺言書という形にしてもらうことをおすすめします」

関連カテゴリー: