“年金探偵”こと、社会保険労務士で年金コンサルタントの柴田友都さん 画像を見る

「『女性自身』の記事を見たという方から、『私も探してほしい』という相談が7件寄せられました。そのうちの1人は、亡くなったお父さんの“消えた年金”を探し出し、年金4,000万円を受け取ることができました」

 

そう語るのは“年金探偵”こと社会保険労務士で年金コンサルタントの柴田友都さんだ。信用金庫に勤めていたころから、「請求もれ年金相談」を研究。行方不明の年金の専門家として、これまで5,000件の“消えた年金”を探し当ててきた。

 

’17年9月26日号の本誌で紹介したところ、読者からの問い合わせがあり、実際に年金が見つかったケースが相次いだという。“消えた年金”とは、’07年に持ち主不明の年金記録が約5,000万件も存在することが発覚し、社会問題となったことを指す。

 

4,000万円を見つけたかおりさん(仮名・68)の父は大正生まれ。昭和25年(’50年)に機械器具の会社を設立し、昭和44年(’69年)の退職まで、厚生年金の保険料を納めていたが、その期間は239カ月。

 

かおりさんの父の世代だと、年金の受給には240カ月(20年)以上の加入が必要で、1カ月不足していたため、無年金状態だった(現在の受給条件は加入期間10年)。父は昭和60年(’85年)に68歳で死去。母も平成24年(’12年)に亡くなっている。

 

「お父さんは会社設立時に33歳。それ以前にも、会社に勤めていて、厚生年金を払っていた期間がある可能性が高いと考えました。しかし、娘さんも、『働いていたと聞いているが、どこで働いていたかは不明』とのことでした」(柴田さん・以下同)

 

昔は厚生年金の記録を照会する場合、本人の氏名や生年月日に加えて、会社名が必須となっている。

 

「調査は難航しましたが、調査開始から8カ月後、社名が変更されていたある会社を見つけました。そこは戦前に輸入代理店をしていてかおりさんの祖父が社長をしていたことが判明。その会社名で照会をかけたところ、かおりさんのお父さんの、昭和19年(’44年)12月〜昭和21年(’46年)3月までの16カ月分の厚生年金記録が見つかったんです」

 

すでに明らかになっている239カ月を足すと、年金の加入期間は255カ月となり、受給資格はクリアとなった。柴田さんは、かおりさんの父がもらうはずだった「老齢厚生年金」と、母がもらうはずだった「遺族厚生年金」を請求した。

 

老齢厚生年金を受け取っている人が亡くなった場合、その人に生計を維持されている配偶者は、遺族厚生年金を受け取れる。

 

「かおりさんのお父さんが亡くなるまでの8年間の『老齢年金』と、お父さんが亡くなってからお母さんが亡くなるまでの27年分の『遺族厚生年金』と合わせて4,000万円が支給。両親が故人だったので、次女のかおりさんを代表に、子ども3人が受け取りました」

 

このように、本人が受け取らずに亡くなってしまった場合、配偶者や子どもが受け取ることもできるのだ。柴田さんは日本の年金制度についてこう話す。

 

「日本の年金は、“請求されれば、支払う”という法制度になっています。つまり、国は請求されないと払わないのです。もし、自分や家族に、年金が支給されていない疑いがある場合は、迷わず私に相談をしてほしい」

 

自分の、そして両親のために、もう一度、年金記録を確認しよう。

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