《3月5日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で、「総理が法律改正にこだわる理由は、『後手後手』批判を払しょくするため総理主導で進んでいるとアピールしたい」というコメントが紹介されています》
《法律改正をする理由はそうではありません。あらゆる事態に備えて打てる手は全て打つという考えで法律改正をしようとしています》
《現行の新型インフルエンザ等対策特別措置法では未知のウイルスしか対象としておらず、新型コロナウイルスはウイルスとしては未知のものではないので、今のままでは対象とならないからです》
3月6日の午前1時半ごろ、立て続けにこんなツイートをしたのは「内閣官房国際感染症対策調整室」の公式アカウントだ。このツイートが言及した“コメント”とは、番組内のパネルで紹介された政治アナリスト・伊藤惇夫氏のもの。同日午後0時半ごろには「自民党広報」公式アカウントもほぼ同じ内容のツイートをした。いったいなぜ、こんなツイートがされたのか、経緯を見てみよう。
3月5日の『モーニングショー』は現在、国会で審議されている「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下『特措法』)」の改正について扱った。安倍晋三首相(65)ら政権側は、「現行の『特措法』は新型コロナウイルスに適用にできないので、適用できるように法改正する必要がある」と主張している。
現行の特措法の対象は“新型インフルエンザ等感染症”と“新感染症”。1月の時点で野党側から「新型コロナウイルスは“新感染症”にあたるのではないか」という声もあがったが、安倍政権は新型コロナウイルスを「特措法」の対象外の“指定感染症”に定めた。
今回の法改正にあたり、ふたたび「改正しなくても新感染症に定めて、特措法の対象とすることが可能だ」という声が高まっている。だが冒頭のツイートにもあるように、政府側は「“未知のウイルス”ではないから“新感染症”にあたらず、特措法の対象外」といった説明を繰り返している。要は「原因となるウイルスが特定されているから未知ではない」という意味のようだ。番組でこれに疑問を呈したのが、コメンテーターでテレビ朝日局員の玉川徹氏だった。
「おかしいでしょ。(新型コロナウイルスは)いまだに未知ですよ。どんなものなのか、完全に解明されている訳ではない。わからないんですよ、いろんな部分が」
さらに玉川氏は新感染症の定義を定めた「感染症法」の条文<「新感染症」とは人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもの>を紹介した上で、こう切り捨てた。
「(新型コロナウイルスは)すでに知られている感染症と、病状または治療結果が明らかに異なるわけですよ。いまある既存の法律が適用できないとはとても読めないわけですね」
なぜ安倍政権はここまで “新感染症”への指定を避け、特措法の改正にこだわるのか。玉川氏は番組内で、国会議員などに取材した結果としてこう解説していた。
「本当は(特措法が)適用できるのに、(新型コロナウイルスに)適用しなかったということになると、なんでやらなかったんだという話になる。その理屈として、『新しい法律じゃないと適用できないから、ここまでできなかったんです』という話だったら通るわけです。そのために、わざわざ改正しようとしているんじゃないかっていうふうな見方がある」
現行法でも対応できる可能性もあるにもかかわらず、安倍政権がわざわざ国会での採決などで時間のかかる法改正を選ぶ。それはまさに伊藤氏のコメントにあった“後手後手の批判を払拭するアピール”、端的にいえば政権のメンツのためではないかという指摘だ。
だが「羽鳥慎一モーニングショー」での玉川氏のこうした批判に対して、「内閣官房国際感染症対策調整室」や「自民党広報」のツイッターは従来の政権の言い分を繰り返しただけ。《そうではありません》というだけで、特に意味のある反論をしていないように見える。これらのツイートにこんな批判も。
《内閣官房は何をいちゃもん付けて表現の自由を抑圧しようとしてるのよ 何?連日、羽鳥慎一モーニングショーが真実報道してるから気に食わないの?》
《モーニングショーの言ってる事が都合が悪いから、名指しで萎縮させようとしてる》
政府機関や公党がツイッターで番組名を名指しで批判するという異例の事態。ここまで反応するのは、痛いところを突かれたからなのだろうか……。