4月1日から、120年ぶりに改正された民法が施行された。民法には、私たちの生活に密接に関わるものが多く含まれるが、なかでも「連帯保証」は重要だ。では、どう変わったのか? 経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。
■連帯保証人が借金返済に責任をもつ極度額が新設
連帯保証と聞くと、「連帯保証人になったばかりに途方もない借金を肩代わりさせられ、一家が路頭に迷う」悲惨な状況を連想する方が多いと思います。それは法人間の契約に多いのですが、実は、個人としても、賃貸住宅の契約や病気入院の際などに、連帯保証人をたてる必要があります。
たとえば、賃貸住宅を借りるとき、大家と入居者が賃貸契約を結びます。それとは別に、大家と連帯保証人の間で、入居者が滞納した家賃や住宅の一部を破損したときの弁償金など、入居者が支払えない、いわば借金を、連帯保証人が代わって支払うという保証契約を結ぶのです。
これまでの連帯保証人は、契約者と同じ責任を負うものでした。借金が高額になっても、契約者が払えなければ、連帯保証人が全額払わなければならない厳しいものです。
ですが、個人が行う賃貸や入院時の契約では、契約時点で、どれくらいの借金になる可能性があるのか、特定できません。家賃が月10万円なら滞納はせいぜい半年、責任は100万円程度だろうと思って連帯保証人を引き受けたとしても、3年分の滞納が発覚し、借金が360万円+利息分になる場合もありえます。
こうした借金がどの程度になるか確定していない契約について、今後は、連帯保証人が責任をもつ限度額を明記することになりました。これを「極度額」といい、連帯保証人の責任は極度額まで、極度額を超えて返済する責任はない、ということです。個人の連帯保証人は責任の範囲が明確になり、多少不安な要素が減ったと思います。
さらに、4月以降の個人の連帯保証契約では、極度額の指定がないものは無効です。必ず極度額を記載しなければなりません。
こうした極度額は“常識の範囲内”という暗黙のルールがありますが、上限は決まっていません。万が一、「極度額1億円」と書かれていたら、原則1億円までの借金は連帯保証人が返済しなければならないのです。保証契約の際は、極度額はいくらか、自分が責任を負える範囲かを確認してください。
連帯保証人は以前より保護されるようになりましたが、それでも大きな責任を伴います。また、親が高齢になり収入も減ったので保証人を頼めない、離れて暮らす親戚には頼みづらいなど、個人の連帯保証人をたてづらい方も多いのではないでしょうか。
そんなとき、保証会社を利用することが増えてきました。保証会社の審査を通過し、賃貸住宅なら契約時に、賃貸料の0.5〜1カ月分の保証料を払うことで、連帯保証人の代わりになります。
身近な契約の変更点を知って、不利な契約を結ばないように注意しましょう。
「女性自身」2020年4月28日号 掲載