パート仲間から集団で嫌がらせ じつはそれはパワハラかも

もはや一般名詞となったパワーハラスメント(パワハラ)という言葉。パートだから、厳しい職場じゃないから、自分には無縁と思っているあなた。もしかしたら、被害者や加害者になっているかもーー。

 

「何がパワハラに当たるのかは、これまでガイドラインしかありませんでしたが、今回の法律で、国がパワハラの具体例を示したことは、大きな一歩です」

 

そう語るのは、労働問題に詳しい笹山尚人弁護士。6月1日から「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)が施行される。まず、大企業を対象にパワハラ防止措置が義務付けられ、’22年4月には義務化の対象が中小企業にも広がることになる。これで職場でのいじめや嫌がらせはなくなるのだろうか?

 

「違反があれば、国が指導しますが、それでも従わない場合には企業名が公表されます。企業は“ブラック企業”というイメージがつくのを避けるための対策に本腰をいれるでしょう。また労働者も法律を把握して被害者にならないことも重要ですが、気づかないうちに加害者にならないように注意が必要です」

 

そこで笹山先生が、ケースごとにパワハラの“境界線”を解説。

 

【ケース1】パートの同僚に嫌がらせをされる

 

パート先には、勤続10年のお局さん的なパートの先輩がいます、仕事の後、彼女は自分を中心としたお茶会をよく開くのですが、公私の混同を嫌った私が誘いを断ったことをきっかけに、パート全員から無視されたり、陰口を言われたり、仕事のやり方を教えてもらえないなどの嫌がらせを受けるように。社員に相談しても「パート同士のことだからね」とあしらわれて……。パート同士だとパワハラにはならないの?(C子さん・47歳、スーパー・パート)

 

「パワハラ防止法は、正社員だけでなく、パートや契約社員、派遣社員にも適用されます。このケースは、パート同士であっても、人間関係の職場内の優位性を背景にしたパワハラ行為に当たります。お局さんという「力関係で優位性がある人」と上手に付き合えなかったからといって、無視されたり陰口をたたかれたりするのは不当なこと。非正規雇用であることに関係なくパワハラ行為です」(笹山先生・以下同)

 

【ケース2】だらしない部下を説教したら……

 

いつも遅刻を繰り返す部下のAくん。ある日、「なんでいつも遅れてくるの? 社会人として自覚がないんじゃない?」と、誰もいない会議室でつい声をあらげて説教してしまいました。Aくんは「これってパワハラですよね?」と騒ぎ始めたんですが……。(A美さん・40歳、家電メーカー・総務)

 

「加害者側に『被害者が傷ついても構わない』『害悪を与えてやろう』という意思があったかどうかは問題ではありません。ハラスメントの成否は、客観的な事実関係をもとに決まります。発言それ自体のほか、それ以前の人間関係や発言の反復性などの周辺的な事実関係も含めてです。『社会人としての自覚』といった言い方には問題があります。一方で、遅刻を改善させたいという業務に必要な指導なので、多少強く注意したとしても、パワハラにならないと考えるのが一般的でしょう。もちろん、部下に手を上げたり、モノを投げたりするような〈身体的な攻撃〉は完全にアウト。長時間にわたる説教、感情に任せて『人としてなっていない』『迷惑だから辞めろ』など人格を否定するような発言も〈精神的な攻撃〉となりパワハラになる可能性が高いのです。これまでのパワハラ裁判でも『口答えする人は会社にいらない』『一度でも楯突いたら懲戒免職にしてやる』『みんなおまえのことを必要ないと思っている』といった発言はパワハラと認定されています。指導するときは、相手の人間的な能力をよくみることが必要。どう言えば相手に伝わるかわからないときは丁寧に対応するべきです。愛情を持って具体的な内容で叱っているかで、パワハラかどうかわかれるのです」

 

【ケース3】同僚のモーニングコールをやらされる

 

わが社では月に2回、7時からの早朝会議があります。ずぼらなメンバーが多い部署にいる私は「しっかり者」と思われ、会議がある朝に、部員1人ひとりにモーニングコールをさせられています。「これも業務の一環だ」として譲らない上司ですが、こんなことは自分でやることじゃないの?(D乃さん・27歳、住宅メーカー・事務)

 

「早朝という業務時間外に、業務に関する指示を出すことはできません。自ら進んでやっているのではなく、強制されてやっているのは、パワハラになる可能性が高い。また、上司の家の引越し作業の手伝いや車での送迎など、業務時間外に業務に関わらない命令をすることも、悪質なパワハラです。業務外で、上司の言うことを聞く必要はありません」

 

しっかり学んでパワハラのない社会を作ろう。

 

「女性自身」2020年6月9日号 掲載

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