次のステップとなる人間への臨床試験はワクチン投与だけで、実際に感染させる実験は困難だ。
「つまり、ワクチンが開発できても、投与した人が自然に感染するまで、ADEが起きるかどうかわからないということです。ADEのリスクは0.0何%といわれていますが、新型コロナの場合、高齢者や基礎疾患を持つなどハイリスクの人の致死率は10%を超えます。どちらのリスクを選択するか。危険性を十分認識したうえで、接種する人のリスクを検討する必要があると思います」
現在、森下教授らが開発中のDNAワクチンはADE以外の安全性は既存の医薬品としての実績もあり、「基本的には安全性に関する問題は少ないと思います」と語る。
「しかし、開発が成功しても早くて来春です。東京五輪までワクチンを国民全員が接種することは難しいと思います。到底、数が足りません。ですから、個人的にはハイリスクの人にまずは接種すればいいと思っています。たとえば、クラスターの起きやすい介護施設や医療現場で使えばいいのではと思っています。最終的には国が判断する話ではありますが……。
今後、海外から人を受け入れ始め、大流行が起きたら医療崩壊のリスクもある。だからこそ、それまでに一つの選択肢としてワクチンは用意しておかなければいけません。そのため、本来ベストにするには3年ほしいですが、それでは遅いので、ベストに近いベターにしようと努力しています」
現在、開発状況は「7合目」だという。東京五輪に向けワクチン開発を急ぐあまり、国民の安全を置き去りにしてはいけない――。
「女性自身」2020年7月7日号 掲載
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